君が縋るから。 ページ46
Aの言葉にほんの少しの嘘も含まれていないことがはっきりと分かった。
俺の頭を撫でながら真っ直ぐに向けられた視線は、きっとありのままを語っている。
「平野になんであんたなんか好きだったんだろうって言われたよ(笑)」
「…そっか、」
「……隣、行っていい?」
Aは俺の返事を待たずに横に寝転ぶ。
するりとシーツを滑って俺の身体を抱き寄せるAの腕に、我慢できずにきつく抱き付いた。
「ごめん、不安にさせたね。」
「……ばか、絶対平野としたと思った、」
「しないよ。大体平野相手じゃ俺勃たな…、」
「言わなくていい!」
……なんか。
いつもと同じ雰囲気。
「…翔平。」
「ん…?」
「別れるの?俺たち。」
「……。」
「俺は、別れたくないよ。」
俺の首筋に頬を寄せて、いつになく弱々しく話すAが愛しくて。
それに、俺だって本当は別れたくない。
その気持ちすら、Aはきっと分かってくれていて。
自分が縋ることで、俺が許すって構図を作ろうとしている。
これ以上のことは、Aにさせる必要ない。
俺はAの背中に腕を回して、ありったけの力を込めて抱き締める。
「……俺だって、別れたくないよ、」
堪えていた涙が、再び溢れる。
小さくぐらぐらと揺れた声を拾ったAは、俺の頬を包むように撫でながらキスをくれた。
何度か重なる唇に幸せを感じながら、俺は気付いたら夢の中へ落ちていた。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時