俺を呼ぶ声。 ページ43
一平さんの心配を無視してキャンプ施設に入る。
コーチも反応は同じで、「今日は休もう」なんて言う。
俺はただ首を振って、半ば勝手にトレーニングを始めた。
結果から言うと、本当最悪。
何をするにも身体が動かなくて、ただみんなに心配をかけるだけだった。
いつもなら軽々持てる用具も気合を入れなければ持てない。
持てたところで、それ以外何もできずに地面に下ろした。
「ショーヘイ、ちょっと休憩しないか?」
コーチが優しく声をかけながら背中に手を添えてくれた。
でも、
「…っ、」
ふとAの手の温もりを思い出して、その手を拒んだ。
コーチはいつもと様子が違う俺を心配そうに見つめたあと、そっと離れていった。
一平さんも「なんか飲もうよ」と俺に声をかけて屋内に入っていった。
ひとり残された俺。
周りには誰も居ない。
俺は再びウェイトトレーニングで使用しているボールを手に取った。
やっぱりやめておけばよかったんだよな。
力が入らないのは分かっていたのに。
手に持ったボールを空に向かって思い切り投げたとき。
強く照らす太陽の光に目が眩んだと思ったら、強烈な立ち眩み。
自分の身体すら支えられないなんて、なんとも情けない。
すっかり身体に力を入れられなくなった俺は、地面に倒れ込んだ。
あーあ…、これじゃもう起き上がれない。
気を張っていたことで堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出す。
これを隠す術なんて、もうなくて。
俺は地面に倒れ込んだまま身体を丸めた。
「翔平!」
すると遠くから聞こえてくる声。
一番聞きたくて、一番聞きたくない声。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時