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時間は過ぎていくばかり。 ページ39

「ショーヘイはここまでだ、今日もよく頑張った。」

監督の声に俺は急いで道具を詰め込んだバッグとバットを掴んでダグアウトを後にした。
ロッカールームへ飛び込むとスマホを確認する。


「来てないか…。」


Aからは何の連絡もない。
今日13時から平野と会う約束だと言っていたのに。
既にその時間から二時間は経過している。


「……大丈夫だよね、」


どんどん悪いほうへ考えが向かっていく。


Aに何かあったら。
Aが傷付いたら。


Aが、
平野とまた、やり直したら。


この距離がもどかしい。
今すぐ飛んでいきたいのに。


知らない間に俺はスマホをキツく握りしめていて、僅かに響いたピキッという音に慌てて手を離した。


俺はAを信じてるんだから。
着替えてポケットにスマホを突っ込むと、一平さんが運転する車で球場を後にした。



「はぁ…、」


部屋に戻ってからも出てくるのは溜め息ばかり。
落ち着かなくて部屋の中を行ったり来たり。
こんなんじゃダメだと今日の自分の打席の振り返りをしたりするけど、明確に反省点や改善点を見つけることができない。


時刻は17時25分。
もう不安で押し潰されそう。

俺は思い切ってスマホを手に取ると、Aのアイコンをタップして電話をかけた。



「…もしもし。」

13回コール音が鳴ったあと、Aの声が聞こえてきた。
出てくれた嬉しさと、平野はきっともう帰ったはずなのに連絡をくれない寂しさと、俺はこんなに心配してたのにっていう怒りと。

俺の気持ちはぐちゃぐちゃになって、うまく言葉が出てこない。


「……俺だけど、」

出てきたのは何とも情けない声。
いつもだったらAは「そりゃ翔平だろ」って優しく突っ込んでくれるんだけど。


「うん。」


Aは一言、返事をしただけだった。


.

電話の向こうに居たのは、→←お前が伝えるべきだろう?



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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時

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