ひとりで行くつもり? ページ37
Aは小さく溜め息を吐くと、俺にスマホを差し出した。
その画面を見た俺は、ドラマでしか聞かないような言葉に思わず息を呑んだ。
ーー A、大谷くんと付き合ってるんだよね。
動かぬ証拠は揃えてあるので、これから日本の週刊誌の会社にリークします。
私は名誉毀損で訴えられても構いません。
あなたたちの関係を壊すことができるなら、別になんてことないから。
私は本気です。
大谷くんの将来を壊したくないなら、私の言うことを聞いてください。
今度の土曜日にAの家に行くから住所送っておいて。
断ったり逃げたりしたら、どうなるか分かってるよね?
会えるのを楽しみにしています。
私は自分の幸せのために行動するのみです。
「……なに、これ、」
「俺と音信不通になったらやばいと思って?(笑)」
「何言ってんの。笑い事じゃない!」
送り先は見なくても分かる。
俺を氷のような目で睨んできたあいつ。
ふざけてライバルなんて言ってたけど、とんでもない奴じゃん。
「ひとりで会うなんて危なすぎる。」
「いや、大丈夫だよ。」
Aは俺に伝えたことで吹っ切れたのか、いつもと変わらない笑みを浮かべている。
俺は今まで感じたことのない不安に襲われているというのに。
「一緒に会おう。」
「ばーか。そんなことできるか。」
「Aと俺のことじゃん、俺も会えばいい。」
Aは首を縦に振らないまま時間が過ぎる。
さっきから流れる冷や汗が不快で、俺はシャツの袖で思いきり額を拭った。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時