お前も美人だよ。 ページ35
置いてかれた子どもみたいな顔してた。
Aの言葉に恥ずかしくなって俯いていると、ゆっくりと互いの身体が離れる。
「…でもさ、A。」
「ん?」
「怖くなかったの?」
「怖い?なにが?」
「平野。」
立ち去るときに俺に向けられた視線は凍るように冷たく、そして鋭かった。
あんな冷たい目で睨まれた経験なんてなかった。
「ずっと睨まれてたじゃん、A。」
「あー、美人が睨むとやっぱり迫力あるよな。」
「美人!?」
「いや、でもそれは事実じゃん!」
「美人とか今関係なくない!?」
またいつもの雰囲気。
Aは楽しそうに笑いながら、くしゃくしゃと俺の頭を撫でる。
そしてもう一度、キスをした。
「翔平もさ、たまにドキッとするくらい美人だよ。」
「……たまに?」
「美人って言われて嬉しいの?」
「…Aに言われるなら。」
「なんだそりゃ。」
気が付いたら俺も楽しくなって、こっそり燃やした平野への嫉妬心は完全に鎮火した。
Aは「帰るぞ」と言うと、ゆっくりと車を出した。
俺はというと、今度撮影の仕事があったら、カメラマンさんに美人に見える角度を探ってもらおうと考えていた。
「あー、でも。」
「左斜め、………ん?」
「…刺されたりしなくてよかったわ。」
「物騒なこと言わないでよ!ドラマの見過ぎ!」
「ふは。……ねぇ、左斜めってなに?」
「!……、うるさい!」
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時