オフの後悔。 ページ31
外に一緒に出かけようなんて、言わなきゃよかった。
終日オフって予定が重なったAと俺は、外でご飯でも食べようかなんてことになって。
Aが車出すよって言ってくれたから、俺はお言葉に甘えて助手席に乗り込んだ。
「めちゃくちゃいい車乗ってんじゃん。」
「俺ね、車好きなのよ。」
「知らなかった。」
「いや、大人になってからだよ。」
「……知らなかった!」
「分かったって(笑)」
車の中でも弾む会話。
Aって俺がふざけて膨れたりすると、必ず拾ってくれる。
このままだったら不穏な空気が流れるなっていうような言葉でも笑いに変えてくれるから、今では俺は完全に甘えてしまっている。
やってきたのはちょっとお洒落なカフェ。
ここはドジャースのキャンプ施設からそれほど離れていないこともあって、行きつけにしている選手やスタッフも多いんだとか。
そのへんの店に気軽に入るってことがなかなかできなくて申し訳なく思う部分もあるんだけど、Aは全然気にしていないようだった。
天気がいいからと外のテラス席に座る。
高校生のときから思ってたけど、Aと話す時間は本当に楽しい。
明るい話題はもちろん、何かあったときでもAと話すと気持ちの整理がついてすっきりするんだよね。
「んで、きゅうりだと思ってたらズッキーニだったの。」
「マジで?見た目違うじゃん。」
「分かんなかったんだよ、トマトソースだったから!」
Aが前に頼んだパスタに入っていた具材の話とかいって、こんなことでも声を上げて笑っていると、
「……Aくん?」
まぁ大体はね、こういう場合は俺が呼ばれることが多いんだけど。
俺たちの前で足を止めた人は、俺には用はなかったらしい。
「平野…?」
俺との会話を中断して、立ち止まる人の名前を呼ぶ。
大事なことだから二回言います。
外に一緒に出かけようなんて、言わなきゃよかった。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時