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約束を破ったのは、 ページ4

カラオケに行ったり、ゲーセンに行ったり。
今までしてこなかった遊びができて、確かに楽しかった。


「俺、明日北海道戻んなきゃだから、そろそろ帰るわ。」


すっかり空も暗くなった18時。
僕の声を合図に解散することになった。

ひとりになると、さらに虚しさが押し寄せる。
今ごろAは、平野とデートでもしてるんだろうか。


行ったって悲しくなるだけなのに、僕は家とは逆の、あの場所へ足を向けていた。




「…くしゅっ、」


沢山お世話になった寮を通り過ぎて、少しすると見えてくる小さな公園。
足を踏み入れようとしたとき、ちょっと離れた場所から小さなくしゃみが聞こえた。


「まさか…、」


僕は思わず駆け出して公園の中に入った。



「なんで、」

「さすがに遅いよ、バカ。」


ブレザーのポケットに手を突っ込んで、ジャングルジムに寄りかかるA。
言葉とは裏腹に、全然怒っていないようでへらへらと笑っている。


「いつから居たの…。」

「ん−、何時だろ。学校出てそのまま来た。」

「平野は…?」

「平野?」

「平野と、デートしたんじゃないの、」

「何言ってんだよ。翔平と約束あるから無理って断ったわ。」



約束を破ったのは、僕のほうだった。

ゆっくりとAに近付くと、両手で頬を包み込む。
本当にここでずっと待っていたんだろう。
Aの頬は氷のように冷たかった。


「…ごめん、」

「別にいいよ。思いっきり遊べたか?」

「うん…、」

「なんでまたそんな泣きそうな顔してんの。別に怒ってないよ。」


自分の勝手な勘違いに腹が立って。
もっと一緒に居られたはずの時間が恋しくて。

今度こそ、涙を堪えることはできなかった。


「今日のお前は泣き虫だね。」


Aは相変わらず優しい声で呟くと、柔らかく抱き締めてくれた。
止まることの知らない涙は、Aのブレザーの肩へと落ちていく。


「ごめん…、」

「もう謝んなくていいから。」


しゃくり上げる僕に楽しそうに笑いながら、優しく背中を撫でて。


.

大きな背中に手を振る。→←僕も、約束を破ろう。



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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時

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