初めての気まずい雰囲気。 ページ29
「なんか機嫌よくない？」
「え？別にそんなことないけど…。」
午後のトレーニングのとき、一平さんが不思議そうに首を傾げる。
基本的に不機嫌になることはあんまりないんだけど、確かに今は超絶機嫌がいい。
だってさ、Aがいつも応援してくれてることは分かってるけど、ああやっていろんな人の目に留まる場所に俺のことを書いてくれたのが嬉しくて。
昔から分かってくれてるからこそ、いい意味でかなり攻めた内容にもなっていたのもやっぱり野球選手としてもAの恋人としても幸せなことだと思った。
「“翔平、今からメインだよ。”」
「あれきついんだよなぁ…。」
これからめちゃくちゃきついメニューが待っている。
でも俺の足取りは軽かった。
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ーー 感想を伝えたいんですけど。
トレーニングを終えてロッカールームに戻ってくると、バッグにしまってあったスマホを掴んでメッセージを送る。
相手はもちろん、俺のファン1号の君。
返事を待つことなく俺はシャワーを浴びに行く。
ーー 来ると思った(笑)
ーー もう部屋戻ってきてるから、いつでもどうぞ。
濡れた髪をタオルで拭きながら片手でスマホを確認すると、ポップアップに表示されたメッセージに笑みが溢れた。
「…お前、髪濡れてんじゃん。」
早くAに会いたかった俺は髪を乾かす時間すら惜しく感じて、キャンプ施設からAの部屋へ直行した。
俺の姿を見た瞬間に眉を寄せるAにちょっとやばいと思う。
それを誤魔化すように軽く抱き付くと肩にすりすりと頬を寄せる。
たく…、しょうがないな。
そう言ってくれると思ったのに。
「翔平、風邪引いたらどうすんだよ。」
Aは俺の背中に腕を回すことなく、しっかり冷たくなった髪に指を通す。
……これはマジで怒ってる。
「ごめん…。」
「体調管理はしっかりするって約束しただろ。」
「…別にこれくらいじゃ風邪なんて引かない、」
Aが吐いた溜め息に言葉が続かない。
思わず俯くと、もう一度溜め息を吐いたAは俺の腕を優しく引いて部屋の奥へと導いた。
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作者名：咲笑 | 作成日時：2024年2月26日 16時
