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文字から伝わる愛情。 ページ28

Aはあれから順調に回復して、今ではもう殆ど痛みを感じないらしい。
俺が甲斐甲斐しくお世話をしたおかげだろうか。


「…んー、お世話ではなかったな。」


えっ。


「声に出てるぞ。」


午前中のトレーニングをひと段落させて戻ってくると、Aが待っていた。
今日の陽射しみたいにふんわりとした微笑みを浮かべたAは、一冊の雑誌を差し出してきた。


「これなに?」

「この前言ってたやつ、記事になったから。」

「あ、Aが書いた俺の記事?」

「そうそう。」


もうこれで発刊されるから内容への文句は受け付けません。

そう言ってAは俺から離れて広報のスタッフルームへと向かっていった。


Aの背中を見送ってから、渡された雑誌に視線を落とす。
…あ、今は飛び付かなくていいの。
きっと目の前で読まれるのが恥ずかしくて離れていっただけだから。


ロッカールームに向かうと早速雑誌を開く。

この前Aのパソコンで見た俺の写真。
自分で言うのもあれだけど、なかなかいい写真だと思う。


「えっと、…『無限大の可能性を感じる瞳』。」


そんなタイトルから始まったAが書いた記事は、さすがだった。


ーー 大谷がグラウンドで見せる圧倒的なパワーは、毎日の弛まぬ努力に裏打ちされた当然の結果である。

ーー 連日行われるウェイトのかかるトレーニングに耐えられる身体を手に入れた大谷は、まさに無限大の可能性を秘めている。


野球を経験したAならではの着眼点と、俺の弱さまで客観的に書かれていた。


「…確かにね。いつも立ち上がりはよくないです。」


ーー ピッチャーとしては、立ち上がりに不安を覚えるゲームも過去にはあったが、今後はこの弱点をどう克服してくるか。それは他チームにとっては大きな脅威だろう。


弱点を弱点じゃなくしてくるから、お前ら覚えとけよ。

そこにAのエールが込められている気がして、俺は無意識に頬を緩めていた。

そして最後に。

ーー Shohei, welcome to the Dodgers!
I'm happy to see you continue to shine.
Now show me your big back!

From Shohei's fan #1.

(翔平、ドジャースへようこそ!
これからもお前が輝く姿を見られることが嬉しいよ。
今度は俺にその大きな背中を見せてくれ!

翔平のファン1号より)


「ふふ、A…。」


俺は雑誌を軽く胸元に当てたあと、丁寧にバッグへしまった。

ほんの少し前に会ったばっかりなのに。


もうAに会いたい。


.

初めての気まずい雰囲気。→←俺の太もも、実は柔らかい。



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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時

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