俺の太もも、実は柔らかい。 ページ27
「……ねぇ。」
「ん?」
「これがお世話なの?」
Aがそう言うのも分かる。
俺は何をしてるかというと、ソファに座るAの隣にぴったりと座っているだけ。…あ、だけじゃない。
この腕はAの身体に巻き付いてホールドしてるし、肩に顎も乗せてるよ。
「どうお世話しようか考えてる。」
「…あとどれくらいで分かりそう?」
「んー。……あ、膝枕でもする?」
体勢はそのままで顔を覗き込むと、Aは「ふはっ」と吹き出した。
俺結構真面目に言ったんだけど。
「太もも硬そう。」
「実はそうでもないんだな。」
「いや、硬いだろ。」
「試してみてよ。」
Aは不意に俺の腕から離れると、腰を押さえながらゆっくりと俺の膝に頭を乗せた。
いや、膝枕とかしたかったけどさ。
まさかAが応えてくれると思わなくて。
膝に感じる愛しい重みに瞬きを繰り返していると、下からの視線とぶつかった。
「…まぁ確かに。柔らかくもある。」
「で、でしょ!?」
「なに、どしたの(笑)」
俺はぎこちない手付きでAの髪を撫でる。
さらさらと指を通る黒い髪。
飽きることなく撫でていると、それをじっと見ていたAが小さく笑い声を上げた。
手の動きを止めてAを見ると、楽しそうに瞳を細めながらこちらに手を伸ばす。
その手は俺の頬に触れて、優しく滑っていった。
「もうあのときみたいに背中向けたりしないから。」
「A…。」
頭に浮かぶ、Aの背中。
思わず抱き付いて、行くなと言いたかった背中。
「俺の後ろ姿を見つけたら、迷わずに飛び付いてこい。」
「…いいの?」
「いや、いつもやってんじゃん。」
Aって、俺が感じている僅かな不安や心の隙間に優しさを降り注いでくれる。
いつもそうだ。
「A、」
膝の上で俺が大好きな柔らかい微笑みを浮かべるAに、背中を丸めると触れるだけのキスをした。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時