僕も、約束を破ろう。 ページ3
卒業式が終わり、教室で最後のホームルーム。
担任の先生の言葉を真っ直ぐに見つめて聞いてから、僕は帰り支度をした。
「大谷、今日はちょっと遊んで帰ろうぜ!」
「そうだよ、またしばらく会えないんだろ?」
最後の挨拶が終わったと同時に、再び集まってくる同級生たち。
それを横目に鞄を肩に担いで教室を出ていくA。
「あ、いや…、今日は…、」
そう言ったところで、遠くから聞こえてきた声に、思わず顔を上げた。
「Aくん、ちょっといいかな。」
平野、だっけ。
学年イチ可愛いとか、花東のアイドルとか言われてた。
教室を出ようとしていたAのところへ小走りに近寄って、呼び止めている。
僕と同じように視線を向けていた周りの奴らが一気に盛り上がる。
「A、卒業式後の告白じゃん!」
「いいなー!高校と一緒に独り身も卒業かよー!」
「つまんねーよ。」
好き勝手にいろいろ言う奴らのほうを振り返ったAは、微笑みながら人差し指を自分の唇に当てた。
それから平野の腕を引いて、教室を出ていく。
その仕草にまた一段と盛り上がる教室。
僕はその二人を呆然と見送っていた。
僕との約束は?
卒業式が終わったら、あの場所で待ってるって言ったのに。
ひとりぼっち、置いてけぼりを食らった気がして、とにかく寂しくなった。
Aと平野の話が落ち着いたのか、再び僕のほうを見る同級生たち。
こうなったらヤケクソだ。
隣に居た佐々木の肩を少し乱暴に組んで「どこ行く?」と言ってみると、みんな嬉しそうに笑った。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時