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その条件、飲んだ。 ページ15

思わず身を乗り出した俺の唇に人差し指を添えたA。


「でも、お前のことを邪魔したくない。」

「……どういう意味?」

「そのまんまの意味だよ。お前は何も考えず野球を楽しんで欲しい。」


俺と同じ気持ちだったら、どんなに幸せだろう。

それだけで十分だと思っていたはずなのに。
俺は自分で思っているよりも、だいぶ欲張りだったみたいだ。


「野球は頑張るよ。」

「じゃあその野球の隙間時間に付き合うか?」

「…何その言い方。」


Aはそう怒るなよって笑いながら二杯目のビールに手を伸ばす。
同じ気持ちだけど、俺とは付き合えないってこと?


「それに、付き合ったってきっと何も変わらないぞ。」

「だったら。だったら付き合ったっていいじゃん。」

「…お前、珍しく今回は強情だな。」

「だって…、」



もう諦めたくないんだ。
10年経ってもなお、Aのことが好きだって気持ちは変わらない。

プロに入って頑張れたのも、エンゼルスで必死に突っ走ってきたのも、もちろん自分のため。
でもどこかでAが見てくれてるんじゃないかって思ってたから。


もう、諦めたくない。



「俺、Aの気持ちも乗せて頑張りたいんだ。」


俺の言葉にビールのグラスを持つ手がぴくりと動いた。
もう迷わないから、聞いて。

Aを見つめたまま、ありったけの思いを伝えたい。


「Aの存在が俺を強くしてくれてるの、いい加減気付いて。」


Aは少しだけ表情を歪めたけど、次の瞬間にはいつもの穏やかな表情に戻っていた。


「この10年で、俺がめちゃくちゃ悪くなってたらどうすんの?」

「そんなわけないじゃん。Aだって何も変わってないよ。」

「お前に近付いて、金盗んでトンズラこくかもよ?」

「ふふ、いいよ別に。お金は溜まる一方。」

「……週刊誌にリークするかもよ。」

「リークされて困ることは何もないもん。Aと付き合ってますって言う。」


次々と投げかけられる言葉。
意地悪なんかじゃなくてこれもAの優しさだと分かるから、俺もスラスラと答える。


Aは小さく溜め息を吐いて、ちょっとだけ乱暴に俺の手を掴んだ。


「約束して。俺の存在が邪魔になったら、その瞬間に俺との関係を切れ。」


そして、自分を責めることなく前だけを見ろ。


今までこんな表情を見たことがなかった。

でも、


真っ直ぐに向けられた瞳に、俺は力強く頷く。

Aは諦めたように笑って、俺の隣に座り直した。


.

ずっと聞きたかったこと。→←短い告白の答えは、



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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時

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