短い告白の答えは、 ページ14
「……A。」
額に触れるその手を掴むと、指先を絡ませるようにして握った。
Aは少し驚いたように目を丸くしたけど、優しく笑って握り返してくれた。
「俺、高校のときからAのことずっと…、」
きゅっと握る手に力がこもる。
さっきから心臓の音がうるさい。
耳元が心臓になってどくどくと鳴っているみたいだ。
Aは俺の言葉の続きを待っている。
表情は変わることなく穏やかなまま俺を見つめて。
「……好き、」
ふたりきりのこの空間に、俺の短い告白が溶けて消えた。
Aは驚いた様子もなく、真っ直ぐに俺を見つめたまま一度瞬きをした。
「お前は本当に相変わらずだな。」
何も変わってなくて逆に心配になるよ。
高校のときからお前はどこまでも真っ直ぐで。
「A…。」
「世界のオオタニを恋人にする度胸は俺にはないなー。」
「…ふざけないでよ、そんなふうに思ってないでしょ。」
「俺はちゃんと客観的にお前を見てるよ。誰が見てもお前は世界的なアスリートだ。」
「Aにそう言ってもらえるのは嬉しいけど…。」
俺もお前のことを特別だと思ってるよ。
だから日本での生活を捨てて、こっちに来たんだ。
アメリカに来たのがほぼ同時期だったから、俺は勝手に同期みたいに思っててさ。
Aの言葉を聞いているけど、いまだに真意は見えない。
「…Aの答えは？」
この声の震えも、きっとAにはバレているんだろうな。
Aは俺の言葉に僅かに苦笑いを浮かべてから宙に視線を彷徨わせた。
そしていつものようにからりとした笑い声を上げて。
「そうだ、お前には回りくどい言い方は通用しないんだった。」
ーー 俺も、お前のこと好きだよ。
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作者名：咲笑 | 作成日時：2024年2月26日 16時
