あの場所で待ってる。 ページ2
「翔平、A、もう体育館行くってよ。」
ぽっかりと空いた時間を埋めるように、僕たちは話し込んだ。
同級生が呼びに来てくれるまで、時間を忘れて。
「じゃあ、またな。」
Aの言葉がどうしても悲しくなってしまった僕は、小さく首を振る。
「…え、お前泣いてんの?」
一歩僕に近付いて、そっと目元を撫でてくれる。
Aはちょっと年の離れた妹が居るからか、こういうことをさらっとするんだよな…。
「泣いてない、」
じわりと滲む視界を遮るように強く目を閉じると、Aの笑い声が響いた。
そしてくしゃくしゃと髪を撫でられる。
「ちょっと髪伸びたな。やっぱりまだ見慣れないや。」
一緒に居たときはお互いに坊主だったもんな。
Aは一足先に髪を伸ばし始めたけど。
「Aと、まだ話したい。」
「俺はいいけど、翔平忙しいんじゃないの?」
明日の朝、北海道に戻ることになっている。
だから、確かにあんまり時間はないけど。
俯く僕にまた小さく笑いながら、Aはぐいっと僕の肩を抱き寄せた。
「それでも、他の奴らと話すこともあるだろ。…あの場所で待ってる。」
―― あの場所。
寮から少しだけ歩いたところにある公園。
そこは、Aと僕の秘密基地のような場所だった。
もう1年半行ってない。
大きく頷く僕を見ると、Aは安心したように笑って、胸元のコサージュが傾いているのを直してくれた。
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作者名:咲笑 | 作成日時:2024年2月26日 16時