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「綺麗だったよね、山桜。
あの時見た景色は最高だったなあ」
「うん」
「でもあの時、俺、智くんに一目惚れしちゃって。
途中から智くんばっかり見てた」
「・・・・・」
「だからすっかり写真も撮り忘れちゃったんだよねぇ」
「・・・・・」
「懐かしいなあ」
「・・・・・」
「ねえ、智くん聞いてる？」
途中から返事をしなくなった俺に翔くんが訝しげに声をかける。
俺は新聞から視線を上げ、彼をまじまじと見て言った。
「行くか」
「え？」
翔くんが目をパチクリとさせる。
「山桜。
春になったらまた二人で見に行くか！」
「えっ、いいの？」
「嫌？」
彼はブンブンと首を横に振り、「行く！」と声を弾ませた。
「じゃあ、約束な」
「うんっ！」
翔くんが俺の手を取り、強引に小指と小指を絡ませた。
「約束ね」
「うん、約束」
指切りげんまんなんて、普段こういうことは絶対しないんだけど。
翔くんがあんまり嬉しそうに笑うから・・・。
今日はまあ、いっか。
翔くんは早速カレンダーをめくり四月の第一土曜を赤丸で囲んだ。
「この日でいいでしょ？」
「気がはえーな、翔くん」
「一応ね、忘れないように」
「そっか、翔くんは俺のことだってすっかり忘れてたくらいだもんな」
「えっとぉ・・・何のことだったかな〜？」
痛い所を突かれ、翔くんはわざとらしくとぼける。
まあ、あれは俺にも原因があったんだけどさ・・・。
「バーカ。
今度俺のこと忘れたら、もう絶交だからな！！」
ピシャリと釘を刺す。
でもそれは自分への戒めでもあった。
翔くんのこと、二度と悲しませたりしないからさあ。
これからもずっと俺と一緒にいてよ。
もう俺のことを忘れたなんて言わないでよ・・・。
「返事はっ！？」
「はいっ」
翔くんは背筋を伸ばし、焦った顔して即答する。
それにはさすがの俺でもふき出してしまった。
そして翔くんも釣られて笑い出す。
結局、朝から二人して大爆笑してしまった。
こんなふうに一緒に笑い合ったり、冗談を言い合ったり、お互いを思い合ったり。
そんな何てことない日常がいつまでも続くといいなあ・・・。
翔くんがカレンダーに書いた赤丸に目を遣る。
元気いっぱいの赤い丸印に翔くんの浮き立つ心が見え隠れした。
今はただ春が待ち遠しい。
【 Forget me not 完 】
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花咲*(プロフ) - なつさん^_^大好きなお話また、読み返して萌を頂いてます。このお話も大好き。 (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 7a9a23c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - まったりやさん» まったりやさん、こんばんは！レスが遅くなってスミマセン！！しばらくツクを開いておりませんでした(-_-;)ゴメンナサイ。さてさて。なんとか完結しましたが、最後はあの方たちも再登場でドタバタでした（笑）楽しんでもらえたのなら良かった♪最後までありがとう！ (2020年3月8日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
まったりや(プロフ) - なつさん、完結＆後日談、ありがとうございます。レジェンド御一行に再開できてお礼も伝えられて良かった良かった。リアルの雑音（？）もある中ですが、なつさんの描く物語には癒やしと楽しさがまさに泉の如く溢れていますね。でもなつさん、無理はしないでくださいね。 (2020年2月27日 13時) (レス) id: 4ac657099e (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - じゅーくろーさん» じゅーくろーさん、こんばんは！こちらこそ最後までお付き合いありがとうございました！潤くんには少しかわいそうな展開でしたが、今は心から二人を祝福してくれているでしょう。やっぱり山はハッピーエンドじゃないと！！ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 葉子さん» 葉子さん、こんばんは！やっとやっと完結！最後までお付き合いありがとうございました♪なんとかハッピーエンド。山はやっぱりこうでなくちゃ！！過去作品も読んで下さってありがとうございます。今度感想教えて下さいね☆ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2019年11月14日 0時
