第一章 1 ページ2
そこに『執着』はあっても『愛』など存在していないのだと思っていた――――
「もう別れたいんだ・・・」
自分で言っておきながら陳腐なセリフだよな、と他人事のように思う。
彼はナイフとフォークを持っていた手を止め、俺を一瞥して言った。
「うん、いいよ」
そしてまたカチャカチャと音を立てて肉を切り分ける。
何事もなかったかのように。
その返事を聞いて今さらながらに気付いた。
彼の中にはもうすでに俺に対する『執着』さえなかったのだと。
「智くんが別れたいって言うならそれでいいよ」
別れ話を切り出されても翔くんは顔色一つ変えなかった。
「うん・・・」
「そんなことより早く食べなよ。
せっかくのいい肉が硬くなっちゃうよ？」
「だね・・・」
なかなか食が進まない俺とは反対に、翔くんは目の前のステーキを事もなげな様子で食べ続けている。
店内は洒落たＢＧＭと人々の談笑で賑わっていた。
でも俺たちの席だけ異空間のように静かだ。
思わずその空気感に押しつぶされそうになった。
「翔くん、ネクタイ」
「ん？」
「ソースが付きそう・・・」
「ああ・・・」
ネクタイを指差して指摘すると、合点がいった彼はネクタイを肩に掛けた。
俺に言われるまで翔くんは気付いていなかった。
ネクタイがソースで汚れそうなことなんて。
彼はそういう人なのだ。
高級なブランド品を身に纏っていても、それが汚れようが壊れようが一切気にしない。
そこに『執着』はない。
俺に対しても『執着』はない。
だから当然、『愛』もない。
「ねえ、翔くん」
「何？」
「一つ聞いていい？」
「いいよ」
「俺のこと好きだった？」
翔くんが顔を上げチラリと俺を見た。
「どうしてそんなことを？」
「ただ・・・最後に聞いておきたくて」
「ふうん・・・」
翔くんは一呼吸置いてから、抑揚のない声で言葉を放つ。
「好きだったよ」
俺には分かる。
そんなのきっと嘘だ・・・。
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なつ(プロフ) - satoshiikoさん» satoshiikoさん、おはようございます！すみませんでした！！リンクを貼り間違えていたようで・・・。しまし今は修正済みです。ご迷惑をおかけしました。不穏な空気が漂っていますがパート2もよろしくです！ (2018年7月21日 7時) (
レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
satoshiiko(プロフ) - なつさん、移行したら最初に逆戻り、グルグルグルグルしちゃいましたよ。でも、ちゃんとパート２も読みました。山の日も近いというのに、よくない展開が、、。 (2018年7月20日 14時) (レス) id: 6dba7c15f5 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - alisaさん» alisaさん、こんばんは！約束を守らなかった翔くんは謎ですが、もうしばらくお待ち下さいね。もちろんちゃんとタあかしはしますから！！ (2018年7月20日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - コッペさん» コッペさん、こんばんは！(｀･З･´)さんやけに素直で気になりますよね。翔くんサイドのお話しはもう少し先になりますです。最後までどうぞお付き合い下さいね☆ (2018年7月20日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - ココロンさん» ココロンさん、こんばんは！俺様翔くんは多忙につき、今はちょっとお休み中。今はなんだか切ない感じですが、最後までどうぞよろしくお願いします☆ (2018年7月20日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2018年6月20日 2時
