363 < Side O > ページ23
翌朝、目を覚ますとすでに櫻井は隣にいなかった。
「嘘だろ・・・」
丁寧にたたまれた布団に嫌な予感がする。
サヨナラも言わずに帰るなんてアイツらしくない。
最後くらいせめて駅まで見送らせろよ・・・。
夕べ必死にタヌキ寝入りをする櫻井に向かって、もう元には戻れないということを告げた。
それでもアイツは頑なに返事をしなかった。
自分勝手だと思うし、深く傷付けたとも思う。
でもそれ以外の選択なんて俺にはない。
俺に背を向けたアイツの肩は小刻みに震えていた。
「櫻井っ！」
慌てて飛び起きて着の身着のまま玄関へ走った。
どうかまだ電車に乗っていませんようにと願いながら。
でもそこにまだ櫻井のスニーカーがあって、拍子抜けする。
「アイツ・・・」
すぐさま居間に引き返す。
櫻井のでっかいリュックはまだそこにあった。
だったらアイツはどこに・・・？
その時だった。
「大野さーーーーーーん！」
元気ハツラツなその声に勢いよく振り返る。
「おはようございまーーーーーーーーす！！」
庭の花壇の前。
櫻井がジョーロ片手に大きく手を振りながら俺を呼んだ。
「何やってんだよ・・・」
夕べはあんなに泣きそうな顔してたクセによ・・・。
今の櫻井は庭の花たちにも負けないほどの満開の笑顔だった。
「なんで水やりなんてしてんだよ」
縁側に立って櫻井を訝しげに見る。
「だって夏の水やりは早朝が鉄則でしょ？
大野さん起きるの遅いですよ〜」
「そういう意味で言ったんじゃない」
「それにしても田舎の夏の朝は涼しいですね。
都会とは体感温度が全然違うなあ」
ニコニコしながら櫻井は言う。
「質問にちゃんと答えろ。
なんでお前が水やりなんてしてんだ！
電車に乗り遅れるからさっさと準備しろよ」
「俺・・・まだ帰りませんよ」
「え・・・？」
「実は昨日から一週間夏休みを取ってたんです。
だからその間ここでご厄介になろうと思って。
こっちにいる間は俺が水やり係ってことでどうです？」
結構、いい仕事しますよ〜？と櫻井は自分を売り込んでいる。
「はあっ！？」
呆気に取られる俺に向かって、「不束者ですがよろしくお願いします」と頭を下げた櫻井。
もう何がどうなってんだか・・・。
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なつ(プロフ) - まったりやさん» まったりやさん、こちらにも感想をありがとうございます！この話はとても気に入っているので、やっぱり最後はハッピーエンド。しかも最後の最後に（笑）新作のほうはまたテイストが違いますが、そちらのほうも楽しんで頂けると嬉しいです！ (2017年5月11日 12時) (
レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
まったりや(プロフ) - 時期を逃した感が凄くて恥ずかしながら…。完結お疲れ様でした！ありがとうございました！笑ったと思えば切なくなりつつ、でもハッピーエンド…。はぁ〜やっぱりなつさんのお話好きです。これからも応援しています！ (2017年5月10日 12時) (レス) id: 6d900dafd3 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - まーりーさん» まーりーさん、最後までお付き合い下さってありがとうございました！最後までどちらに転ぶか分からない展開でしたが、最後の最後でやっと♪文庫本でほしいとは見に余るお言葉！ありがとうございます！！ (2017年4月5日 0時) (レス) id: c9214b2a41 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 虹空さん» 虹空さん、最後まで読んで下さってありがとうございました！しかも更新を心待ちにしてくれて嬉しい限りです。ニノのシーンを気に入ってもらえたのはすごく意外でした！ (2017年4月5日 0時) (レス) id: c9214b2a41 (このIDを非表示/違反報告)
まーりー(プロフ) - なつさん！お疲れ様でした！少し来てない間に完結してました〜！後半雲行きが怪しくなってきたので、どうかハッピーエンドで終わりますように！と思いながら読んでおりましたが、無事にハッピーエンドで大大満足です♪文庫本で欲しいくらい！次も楽しみにしてます！ (2017年4月4日 2時) (レス) id: 4ae3cb9273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2017年3月6日 0時
