検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:235,458 hit

88 ページ41


ここはどこなのだろう?


今、自分がどこにいるのか分からなくて一歩足を踏み出す。

その瞬間、ギシギシと音を立てて床が軋んだ。
古ぼけた木枠の窓からは夕焼けの名残りの朱色が差し込んでいる。


それでようやく気付く。
ここが小学校の廊下なのだと。


「翔くん」

背後から懐かしい声がして咄嗟に振り返った。


「智くん・・・」

そこにいたのは少年の姿をした智くんだった。


「ここに来ちゃダメだろ?
大人の翔くんはもう帰らないと」

薄暗い廊下に佇んでいる智くんがそんなことを言った。

「どうして?」

「いいから早く帰って!俺はもう行かなくちゃ」

「行くってどこに?」


思いっきり声を振り絞る。
それなのに智くんは俺の問いには答えず、クルッとこちらに背を向けて長い廊下を走り出した。


「待って!」

その背中に向かって呼び止めると智くんが足を止めた。
そしてゆっくり振り返る。


「ここから先は翔くんは見ちゃダメなんだよ。
だから付いて来ないでね」

そう言ってまた走り出す。


そして彼はガラガラと廊下の突き当りにある引き戸を開けて中へ入って行った。
そこは確か職員室だったはず。


職員室に何があるの?
どうして付いて来るななんて言うの?


俺は智くんの忠告も聞かず後を追いかけた。


滑りの悪い引き戸を勢いよく開けると、そこは職員室のはずなのに、なぜか目の前には校庭が広がっていた。


そして見覚えのある五人の少年の後ろ姿が目に飛び込む。
一列に並んで手を繋ぎ、前を見据えていた。


「だから来ないでって言ったのに・・・」

真ん中に立っていた智くんが振り返り、悲しそうな顔をして言った。


智くんの左隣にいるその背中は・・・俺なのか?
俺と思しき少年は智くんの手をギュッと握って、こちらに背を向けたまま立ち竦んでいた。




遠くからポンプ車の警鐘が聞こえた。

いつの間にか朱色の空は、深い藍色に変わっている。

五人の少年がじっと見ていたのはオレンジ色の炎を上げて燃え盛る校舎だった。


89→←87



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (408 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
801人がお気に入り
設定タグ: , 大野智 , 山コンビ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

なつ(プロフ) - 青奈さん» 青奈さん!Mステ私もリピしまくってる。もう感動する( ;∀;)これは永久保存版にしなくては!次章では具体的にあの日のことを語ります。お楽しみに!あー今からまたリピしようかな~☆ (2015年10月28日 21時) (レス) id: 758e137704 (このIDを非表示/違反報告)
青奈(プロフ) - なつさん☆こんばんは!遅くなってしまいました(>_<) 放火の原因が成績?!他にも何かあるのかしら?引き続き智くんが何を語るのか楽しみです☆ 次回はもう新章ですかぁ?わっ!早い(*^^*) 楽しみにしてるね☆ 私はMステのリピが止まらず全ての思考がストップ(笑) (2015年10月27日 21時) (レス) id: ce0fe14fe4 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - しるひさん» 「夫婦みたい」発言は次章にも響いてくるので、ご期待ください!これから智を巡ってにのみーと翔さんの熾烈な戦いが始まるので、お見逃しなく! (2015年10月27日 11時) (レス) id: 27a91629dc (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - ろざさん» ああ、あのサブタイトルはお分かりの通り、ふざけて付けてるよ♪ずっとシリアスな内容が続くと気が滅入るから。だから軽く流しちゃってください!!次章もよろしくです☆ (2015年10月27日 11時) (レス) id: 27a91629dc (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - kisaraさん» kisaraさん、嬉しいコメントありがとうございます!とうとう智くんが語り始めちゃいましたよ。次章では相葉君がちょこちょこ出てきそうな感じです。乞うご期待くださいね☆ニノが号泣って、リアルではあまんり想像つきませんよね〜・・・ (2015年10月27日 10時) (レス) id: 27a91629dc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なつ | 作成日時:2015年10月9日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。