all for “YOU” 〜君の罪、僕の嘘〜 2 【山】

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智くんと別れて向かったのは、大学のキャンパスだった。


クリスマス当日、しかもすっかり日が沈んでしまったこんな時間となれば、いつも学生で賑わっているここも物寂しい空気が漂っている。

ほんの少しの心細さを抱えながら、俺は構内の図書館に足早に入った。

そして入退館ゲートに学生証を通して真っすぐ向かった先は精神医学の図書が並んだ一画。
めぼしい本がないか書棚の前を右往左往した。



「あったあった！」

手に取ったのは、臨床精神医学の解説書。

その場でペラペラと捲って中身にサッと目を通す。
『ＰＴＳＤ』の解説があるのを確認して席についた。



『ＰＴＳＤ(心的外傷後ストレス障害)は、震災や火事、事故、暴力や犯罪被害などがトラウマとなり、後々にまで強い恐怖を感じるのが特徴』


『主な症状は、過呼吸や動悸、フラッシュバック、入眠困難、集中力の低下など』


『精神療法と薬 物療法によって、症状を軽減させることが可能』


『うつ病などほかの病気を併発する恐れもある』



本のページを捲りながら思う。

智くんはこの十年、心の病と共に生きてきた。
いくら自分が蒔いた種とは言え、辛い思いもたくさんしてきただろう。
自分を責めることも幾度となくあったに違いない。


一方、俺は祖父や両親に歯向かうことも出来ない不甲斐ない自分を彼のせいにして、この十年を過ごしてきた。
何かうまくいかないことがあると、全て『あの日の秘密』を言い訳にしてきたような気がする。


そして今年の春、ようやく時効を迎えた。


今さら虫が良すぎるけれど俺が智くんに出来ることと言えば、彼のことを責めたり否定したりせず、そっとそばに寄り添うこと。



智くん、あなたの心の傷を俺にも分けてよ。
ずっとそばにいてあげるから。



開いていた本を閉じる。
そして静かに目をつぶって心に誓った。



智くんのことは俺が守る。

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