all for “YOU” 〜君の罪、僕の嘘〜 2 【山】

60 ページ13

「あの松岡先生が？嘘だろ？」


熱血漢で曲がったことが大嫌いだった松岡先生。
そう言えば当時智くんは俺と違って、担任の風間先生よりも松岡先生と気が合っていたような気がする。
先生自身もそんな智くんに目をかけていた。

それなのになぜ先生は・・・。


「本当だよ」

「どうしてっ！？」

思わず語気が強くなってしまった。

「松岡先生はダム建設の推進派だったんだ」

「それは風間先生からも聞いたよ」

「どうしてもダムの建設を進めたかったんだろうなあ。
翔くんの爺ちゃんと松岡先生が結託して噂を広めたらしいよ」

「それ、誰に聞いた？」

「校長先生がうちに来て父さんに教えてくれたんだ。
校長先生は村の中でも数少ない中立派でね。
それで松岡先生が校長先生にもグルにならないかって持ちかけたらしい。
校長先生はきっぱり断ったらしいんだけど、俺たち家族のことを心配して父さんに話してくれたんだ。
俺はたまたまそれを聞いてしまって・・・」

「それは噂されてた利権と関係あるの？」

「さあ・・・その辺は俺には分からないよ。
まだ子どもだったし。
ただショックではあったよ。
俺、松岡先生のこと好きだったから・・・」

「そうだよね・・・」



松岡先生はあの頃、村の活性化に繋がればいいとダム建設を推していたと風間先生は言っていた。

それはただの建前だったのか？
それとも最初は高い志を持って推進していたけど、甘い汁に目がくらんで祖父と手を組んだのか？

理由はどうあれ、きっと当時の智くんは先生に裏切られたような気分になっていたのではないかと思った。



「心療内科にかかり出したのはそれを知ってからだよ。
放火のことと松岡先生のことが二重になってのしかかってきたんだ。
もう堪え切れなくなって、それで・・・」

そこで彼は言葉を詰まらせた。


自分の犯 した罪と先生に裏切られたショック。
智くんの心情を思うとやりきれない気持ちになった。

そしてやっぱり祖父のことが許せないと思った。

61→←59

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す