独立独歩のえいりあん 2 (ページ10)

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赦した話　リーマスページ10

僕が大好きな或る日本人の女の子のことを話そうか。

あの子はとても不思議な子でね。周囲が彼女に何をしようとも、何と口汚く罵ろうとも、彼女自身はまるで気にしちゃいないんだ。いつもストレートな黒髪を靡かせて、その小柄な身で、何でもないように闊歩するんだ。

とても強い心の持ち主だと思うだろう？でもね、それだけじゃないんだ。

笑っちゃうんだよ、あの子ときたら。

あぁその前に、僕の話をしよう。身の上話ってところかな。他人の身の上話なんて興味ないし退屈かもしれないけど、少し我慢して聞いてくれないか。

実は僕は人狼なんだ。穏やかな家庭に生まれ、両親に可愛がられ、ごく普通に育ったのだけれど、僕が人狼に噛まれたあの日から、僕の世界は一変したんだよ。

僕が人狼になってから、両親は僕が余計に傷つかないようにと僕を世間の目から隠した。僕も自身を隠した。暗雲立ち込める森で、ひっそりと息を潜めるように。

満月の夜に現れる破壊衝動は正に獣そのもので、こんな醜い姿を誰にも見せたくなかったんだ。
だから僕は、周囲の子供に馴染まなかった。ホグワーツに入学しても孤独を選んだつもりだった。まあ、僕の意思に反して、勿体ないくらい素敵な親友たちができたけどね。それは僕にとって幸運なことだった。

それでも僕にとって満月は、忌々しい存在でしかなかった。僕の正体が生徒全員に知られたら、きっと、殆どの人間は僕に石を投げ、罵詈雑言を浴びせるだろう。

そんなことされても、僕は人狼だから仕方ない。

でも、でも僕は、そんなに罪な存在なのか？
僕が一体何をしたっていうんだ？僕は滅ぶべき者なのか？

そう思えば思うほど、僕は罪悪感と無力感に苛まれた。数えきれないほど鬱屈した夜を過ごした。この世に生まれてきたことすら後悔した。何も悪くない両親を身勝手にもほんの少しだけ恨んだ。

自分が自分を一番赦せなかった。

でもね、あの子が言ったんだ。僕は僕のままで良いって。

本当に笑っちゃうんだよ、あの子ときたら。今まで人狼だということを隠してきた僕を、なんの戸惑いもなく受け入れて。恐ろしい存在だと知っているくせに。

けどあの子の言葉で、僕は少しだけ、僕を赦せたんだよ。
醜い化け物の僕が、疎まれるべき僕が、僕が嫌いな僕が、肯定してもいいかなって思えちゃったんだ。

まあ、あの子は僕がそう考えていたことなんて知りもしないだろうけどね。
でもそれでいいや。そんな彼女が、僕は堪らなく愛おしいのだから。