独立独歩のじゃぱにーず 3 (ページ4)

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遠い背中ページ4

新学期が始まり暫くした今日この頃、ようやくホグワーツ全体は入学式からの空気が落ち着いてきた。
今回の魔法薬学はペアになり作業を行うものだ。僕のペアになったマルシベールは、実験中にこそっと僕に耳打ちしてきた。

「なぁセブルス、お前が考えたあの呪文、使い勝手が良いな」
「そうか」
「この前ハッフルパフの奴に使ってやったら、ククッ、情けねぇ面で逃げてったぜ」
「マルシベール、あまりそういうことを大っぴらに言うのはよせ。色々と面倒になる」
「おっと、すまないな。そういやセブルス、知ってるか？」
「何だ」
「Miss.モンキーの奴、あのシリウス・ブラックと恋仲になったらしいぜ？」

「ブラック家期待のご長男サマの相手があんな猿なんて…」とマルシベールは呆れたようにAへと目を向けた。それに釣られて僕の視線も彼女の背中へと向く。

ジョイスとペアを組んでいるAは、こちらの視線など気付くことなく、作業中だというのにジョイスと戯れあっていた。

「ちょっとA、アブラガエルの脚はまだ入れないはずよ」
「えー、どうせ後から入れるんだし大丈夫だって」
「はぁ、もう～、そう言ってこの前鍋ごと爆発させたのを覚えてないのかしら…」
「失敗は成功のもとだよ」
「成功してから言いなさい」

ジョイスは叱りつけるようにコツンとAの額を軽く小突いた。その姿はさながら姉のようだ。

「次から私が材料を入れるから、貴女はかき混ぜてること。良いわね？」
「へーい」

渋々といった様子でAは鍋をかき混ぜる役をジョイスと代わった。ジョイスは満足げに一息つき、教科書と材料を見比べた。

こうしてみると、Aは僕がいなくたって存外上手くやれているものだ。そう考えると、別に悲しくない筈なのに、胸に穴が空いたように虚しい。
いつだって傍にいたA。背中合わせになった時もあった。だがその背中はいつの間にか僕から遠ざかっていたのだ。

だからこそ、親しげにブラックの名を口にする、あの笑顔が許せなかった。僕のことで気を病んで窶れた青い顔は、もう消え去った。僕などAの中で所詮その程度の存在なのだ。

ルーピンのことといい、ブラックのことといい、Aはあいつらに溶け込みすぎた。マルシベールの言葉は、僕とAの間に確実な線を引いた。

「どうしたよセブルス、顔が怖いぜ」
「いや、何でもない」
「そうか、それよりさっさと薬を完成させるか」
「あぁ」

悲しくなんてない、きっと。