兄貴のお気に入りに恋をした【灰谷竜胆】 (ページ16)

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指定のコンビニまで行くも
バイクから降りようとしない女に疑問を持つ。

｢なんだ？｣

｢あの、ここまで来てもらって申し訳ないんですけど、
もし良かったら家までお願いできますか…？｣

｢？まぁ、いいけど。そんな変わらねぇし｣

｢すいません…｣

？？？

どういうことだ？
自分から家を教えるようなことして。
バレんの嫌って言ってたよな。

俺の周りの女は
｢そのまま家に上がっていってよ～｣みたいなこと言ってくる奴が多かったけど、たぶんその流れは違う…と思う。

あれか？警戒心が少し和らいで
︎︎〝どうせなら家まで送って行ってもらお☆ 〟
みたいなノリなのか？

それもなんか違う気がする。
わざわざコンビニ来てから言い直すくらいだし。

わからねぇ、今までのタイプと違いすぎて
普通の健全な女子の生態がわからねぇ。
何となくわかるのは謙虚な奴だな、という印象くらいで。

｢あ、そこ曲がった、つきあたりです｣
後ろから腕を伸ばして指差しで俺に教えてくれる。

家の前でエンジンを切ると
｢ありがとうございます、こんなことまでさせちゃって
ごめんなさい｣

そう言って俺が貸した服をいそいそと脱ぎ始める。

｢お、おまえ！こんなとこで脱ぐなって！(小声)｣
｢えっでも、返すタイミングがなくなるから…｣

｢…｣

そうか、もう会う理由もねーんだな

｢灰谷さんこそ寒かったでしょ？今ならまだ暖かいから着て、ね？｣

｢…洗って返せ｣

｢へ？｣

｢普通服借りたら洗って返すだろ｣

家まで寄らせたのはその為か

｢えっ…あ、そうですよね。
じゃあ洗濯したら灰谷さん家の前に置いときますね、どこらへんに置いときましょう？バイクの取っ手のへんとかにかけときましょうか？｣

警戒心薄れたから、とかじゃないのかよ

｢なんでそーなるんだよ｣

今日会ったばかりの奴だというのに、
それを名残惜しく感じている俺は一体どうしちまったのか。
どうしたいのかも分からねぇ。