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Aside
お別れの決意をしたばかりなのにこうやって抱き寄せられていることに頭がついていかない。
相手の心情が読み取れず何を言われるのかと意識を彼に集中させていると、言葉より先に伝わってくる震え。
倒れた私を受け止めたせいで痛みが走ったのか、なんてキャパオーバーな頭は妙に冷静な思考を巡らせていた。
咄嗟に彼の体から身を引こうとすると抱き寄せる腕に力が入る。
拘束する為ではない。
すごく弱々しい自信のないような、すがるような抱擁。
「なんでそんな必死なの」「何なの、ほんと」
自分の肩に埋まる彼から聞こえる覇気のない声。
まるで自分自身に言いかけているようだった。
その腕の中がとても心地良くて自然と彼の背中に腕を回す。
それに甘えるように
私の肩に額をぐりぐりと優しく押し付けてくる。
今日が最後なんかじゃない、そう確信した。
どん底のような気持ちが一気に浮上してその感情の起伏についていくのがやっとだ。
「もしお前が無理だったらいつでも逃げていけよ」
束縛する訳でもなく私の逃げ道を作る彼の言葉と
そう言いながら力のこもった腕の離さまいとする仕草があまりにもアンバランスで
素直で不器用な人なんだろうな、
と思わずにはいられなかった。
────────────────────
細い路地裏、2人の男女。
言い合っている様子から察するに喧嘩だろうか。
所々会話が自分の耳に入ってくる。
野暮かもしれないが興味があってその場に隠れていると
最後は和解したのか抱き合っている。
(あんな顔、はじめて見た)
乾いた血がついた自分の拳を見つめながら
(これなら心配ねぇ、かな)
その場を後にした。
電話を手に取り、かける相手は
「もしもし、あー九井?…うん、
でさ次の取引の件は俺だけで相手すっから。
もし人数必要なら用意すっけど。
…うん、は?竜胆?
夢の国に行ってるから無理っぽい」
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NA - 面白かったです!!!! (2022年12月18日 21時) (レス) @page47 id: 9c547ad202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トム | 作成日時:2022年6月19日 22時