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42.抱擁 ページ42

「お前の目指すもんと俺は真逆だ、気ィ済んだらもう行けよ」

「」

これ以上何も言わせぬ空気が流れる、


「もう会うこともねぇ」

矢継ぎ早に言う彼の言葉が自分に刺さってくるようだ。

瞳いっぱいに溜めた涙が瞬きもしない間に静かに零れた。


早く立ち去ろう、これ以上面倒な奴だと思われたくない。

自分でもまとまらない頭の中を
どうにか言葉に変える。


1度離れていった手を再度握ると、


「竜胆さん、あまり無茶しないで下さい」
「これが日常だって、言わないで下さい」
「私は優しい竜胆さんの一面を知ったから…だから走ってここまで来れた、のに。昔の事実を知っただけで後悔さえしてしまう私は臆病者です」


「中途半端な思いでここまで来てしまったこと、ごめんなさい」

いつも後ろにまとめている前髪は力なく垂れ下がっていて
表情が見えない。


「いつか…貴方みたいな怪我をした人を治療できる看護師になります」


静かに聞くだけで返事はない。
独り言のようだ、そんな自己満足な私の言葉をただ聞いてくれる。

「あまり無茶しないで下さい。じゃ、私は…これで」

握っていた手をそっと離す。
顔色を伺うと彼はまだ地面を見つめていた。

これで、良い。立ち上がり頭を下げた




とき、

ガバっと視界が揺れた。
来た道へ振り返ると同時に腕を引かれバランスを失う。

が、痛みはなかった。

目の前には確かな温もりと彼の金髪が頬をくすぐる。

「お前、なんでそんな必死なの」
「…え」
「何なの、ほんと」
さっきまで震えていたのは自分だと言うのに。
今は彼の震えが伝わってくる。


「受け入れるのは時間がかかるけど
寄り添うくらいなら、私にだってできます…と思う、きっと」

「ふはっ、お前自信ねーのな」

「私の常識で通用するか…どうか」
「お前の常識、全部覆してやるよ」


抱き合ったままで彼の顔は見えない。

「後悔すんなよ、A」

抱きしめる腕に力が加わった。

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NA - 面白かったです!!!! (2022年12月18日 21時) (レス) @page47 id: 9c547ad202 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トム | 作成日時:2022年6月19日 22時

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