ひらり、言の葉。

観察日記。2 ページ26

2人を見送ってから、取り出したスマホ。

普段はあまりやりとりすることはないのだけど、本で得た知識を披露するために、LINEのアプリを起動させる。
そこから個人でニノをタップして、文字を打ち込み送信。

見るのかなーと思ってそのまま画面を見つめていると、数秒置いてついた既読の文字。
思わず笑って、スマホを置いた。


さてさて。
どんな顔で戻ってくるのかな…。


読みかけていた本を開いて、再びページをめくった。


そして。
さほど経たずに戻ってきたふたり。


「おー、お帰り。
何買ってもらったの？ニノ」


しらっと声を掛けると、わかりやすく耳を赤くしたニノが近づいてきた。


「…なに、あれ」

「ん？」

「ラーイーン！なんなのよ、ホントに！」


俺がわざわざ送った知識。
しっかり理解して読んだらしく。でも、照れているのか、ぷりぷりと怒るニノ。


「なに？翔ちゃんからだったの？さっきの」

「ん？」

「なんか、LINEだーとか言ってスマホ見た途端、ニノが赤くなってさぁ」


ちらり、とニノをみた雅紀。
その視線に「なんでもねーよ！」と応えるニノ。
納得いかなそうに俺とニノの顔を見比べる雅紀。


まったく。
まだわかんねぇかなぁ。


そっとニノに顔を近づけ、もひとつ、その赤い耳に得た知識を囁いてやる。
びく、と身を引いたニノ、の、肩をがし、と組んで止めたのは、雅紀。
でもニノはそんな雅紀の行動にも、びくりと身を震わせた。


「ほーら、な？」

「え？なに？翔ちゃん。なにが、ほら？？」

「…アンタは気にしなくていいの」


見てて笑っちゃうくらいに赤くなったニノ。
どうだ？
認めたか？


なんだよー、とブツブツ言いながら、ズルズルと引きずられながら、ソファに移動するふたりを眺める。

すぽんと座れば、ちょっと、くっつきすぎじゃない？くらいに近くで話して笑ってるふたり。

そりゃね、ニノはその距離は人と比べて許容範囲が広いけど。
雅紀は違う。しっかりと人との距離は。パーソナルスペースは、確保する奴だ。

でも、いまのニノと雅紀の距離はとてつもなく、近い。

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