徒然ラブレター〔短編〕

＊恋文6通め〔黄〕 ページ8

実際ブスなその泣き顔をスマホで撮って
光の速さで添付。






｢……え、ちょ、何？！｣

｢うわ、ホンマにブス｣

｢ちょっと！｣








スマホを奪いにかかるそいつを巧みにかわして
紙飛行機形した送信ボタンを押した。








｢こんなん1発で伝わるやろ｣

｢え？｣

｢…夜の便ゆうてたよな。まだ飛んでへんやろ。｣







ブツブツ1人で喋る俺に

彼女の泣き顔は困惑顔に変わり、
もはやそれを通り越して鬼の形相の勢い。








｢もう意味わかんないっ｣








それでもまともな説明をしない俺に
そっぽを向いた彼女の背中。







なぁ、A
ほんまは伝えたい事あったんやろ？







強がりのせいで折れてしまったその背中の羽を
ちょっと補強する。

俺に出来るのはこれくらい。

後は





あの人に任せるしかない。









｢…あー、なんか俺虚しくなってきた｣

｢は？｣

｢俺も腹減った。飯奢って。冷やし中華な｣

｢はぁ？｣









これが俺が持てる力。
俺の答え。







神様、

どうか
ちゃんと届けてや



気まぐれなあの人が旅立つ前に、
電源を落としてしまう前に、
スマホをチェックするように



どっかの強がりさんの気持ちが届くように。









｢こんな時期に冷やし中華なんてあるわけないじゃん!!馬鹿なの？！ちょっと、ねぇ！！亮ちゃ…｣







ピコンｯ







荒ぶる強がり彼女のポケットから

俺からの紙飛行機を受け取ったであろう
旅人の彼からの

手紙が届いた音の気配がした。









……なんやねんその顔。









アホめ
もっと俺に感謝しろ。









神様
ありがとう。



うん、



でもこれって







結構、しんどいな。









＊徒然ラブレター
恋文6通め

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