雲の刻印 ページ10
「失礼しま、わわっ」
Aが応接室に入る際に「失礼します」というのはもはや癖のようなものでその日も扉を開けながら言っていたのだが、最後の一文字が出る前に開けた扉のすぐ先に立っていた雲雀に驚いて言葉が中断される。
「ひ、雲雀先輩……？ どうかしました……？ 遅刻してないと思うんですけど……」
「これ、君なら何だか知ってるでしょ」
雲雀がそう言って見せたのは雲が刻まれた半分だけのボンゴレリング。
「い、一応……」
「……これを持っていなきゃ君を助けられない？」
「うーん……それがあったほうがいいかもしれませんが、無くても雲雀先輩は雲雀先輩ですから」
「ならいらない」
と言って雲雀はぽいっと指輪を投げてソファに座ってしまう。Aは慌ててその指輪をぱしっと両手でキャッチした。
「これ結構大事な物なんですよ！？」
「君以上に大切なものなんてないけど」
「うぐぅ」
変な声が出てしまったAが取り繕うように咳ばらいをしたところで応接室の扉が開いた。
「お前が雲雀恭弥だな。お、Aもいたのか」
「こんにちは」
「……誰……？」
「オレはツナの兄貴分でリボーンの知人だ。雲の刻印のついた指輪の話がしたい」
「ふーん、赤ん坊の……じゃあ強いんだ」
「指輪、届いてるよな？」
「知らない。指輪の話なんてどうでもいいよ。あなたを咬み殺せれば」
「あ、あれ？ いや、送ったはずなんだが」
「ディーノさん……」
ディーノの名前を呼ぶAの手の中にディーノの言った雲の刻印のついた指輪があった。
「なるほど、確かに問題児だな。いいだろう。その方が話が早い」
＊＊＊
「彼はいつも"ああ"なんですか？」
ディーノと戦っている雲雀を見ながらロマーリオが言う。
Aは呆れたように頷いてから雲雀を見つめる。
「そうですね。群れているから咬み殺す。並盛の秩序である彼のモットーですね。ありがたいことに私は例外となりましたが」
「よほど愛されてるんだなぁ」
「えぇ、多すぎるくらいいろんなものを貰ってます」
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作者名：うがつ | 作成日時：2022年9月22日 23時
