わがまま姫 ページ37
Aの家についてもAはだんまりだった。というよりぼーっとしているようだった。
「A?」
「大丈夫、です。力をたくさん使ったから、ちょっと熱が出てるだけで……明日の夜にはよくなるって、聞いてます」
「誰に」
「私の師匠です」
Aの師匠が言うのなら恐らくそうなのだろう。雲雀は納得せざるを得なかった。
「雲雀先輩、抱きしめてくれますか」
「いいよ」
「……頭、撫でてくれますか」
「いいよ」
Aに言われた通り雲雀はAの小さな体を抱きしめ、頭を何度も優しく撫でる。
「……頑張ったねって、言ってくれますか」
「君は頑張ってると思うよ。今日のことも、普段のことも」
普段のAからすれば、らしくないわがままだった。
だが雲雀は全てを許容した。あの雲雀がここまでするほど雲雀にとってAの存在はかけがえのないものになっていた。
「…………私、間違ってなかったですよね。あそこで勝とうとして頑張ったの、間違いじゃないですよね」
「うん」
「明日、行けるかなぁ……ツナがボスになるまでまだまだやることは数えきれないくらいあるのに、もう疲れちゃいました」
「これが終わったら海に行こう」
「海、ですか?」
「そう。君好きでしょ、海見るの」
「好きです」
「だから今日はもう寝なよ。明日のこととか心配しないで、目を瞑って」
Aは言われた通り目を瞑り、雲雀はその瞼にキスを落とした。
「今日は僕もここで寝るから」
「それなら悪い夢は見なさそうですね……おやすみなさい……雲雀先輩」
「うん、おやすみ。A」
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作者名:うがつ | 作成日時:2022年9月22日 23時