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「おしゃぶり……? なんで、Aは赤ん坊じゃないのに……」
Aの首から下がっているおしゃぶりから輝きだす光を見て、ツナは疑問の声をあげる。
今までツナが出会ってきたアルコバレーノは1つの例外もなく全員が赤ん坊だった。
だが今、目の前に初めての例外が存在していた。
その例外はツナが中学に入って初めて友達になった大切な人だった。だからこそツナの中の疑問やショックは簡単には拭えない。
前髪をぐしゃっと掴んでAはアネモスを睨む。
「物語を壊す君はいらない。でも私は弱いから、この下のプールに君を落として殺すなんて残酷なこと出来ない」
「チッ、風が全部あいつのところに、クソッ、なんでだよ!!」
「君よりも私が上なだけ。さっき君自身が言ったんでしょ。私は調整役で何もかも貰いすぎだって」
Aは操りアネモスの首から風のリングを奪う。カチリと音がした。リングが1つになった音だ。
リングが奪われ、Aの元で1つになるまでアネモスは何もできなかった。
それもそうだろう。風を操れない彼に成すすべはない。そもそも風は視認できるものではないのだから。気づけばリングは自分の首から離れ、そのリングに手を伸ばしてもあっという間に風が連れ去っていってしまう。
そしてそのままAはアネモスをプールではなく安全なプールサイドに落とした。足場からプールサイドまで結構離れているが、そこまで配慮するほどAの心に余裕はなかった。
Aはすぐにおしゃぶりを袋の中に入れる。
「風のリング争奪戦は下風Aの勝利です」
降りてきたAの足取りはふらついていた。それもそうだ。アルコバレーノの力を開放したのはこれが初めてで、練習なしに短い間に一気に使ったのだから伴う疲労はかなりのものだ。
酷い顔をしているAを隠すように雲雀が肩にかけていた学ランをAの頭に被せ、そのまま抱き上げる。
風のリングをアネモスから奪ってから今までAは一言も言葉を発していない。
ツナファミリーの風の守護者がアルコバレーノだった。それだけでヴァリアーが彼女を狙う理由は十分だろう。
その場にいるヴァリアーがAの元に行こうとしたとき、Aが弱々しいが、その場の全員にしっかりと聞こえる声量で言った。
「私を奪うなら争奪戦の後にして。ヴァリアーが勝てば私はそっちに行く」
「A」
「大丈夫です。ツナは勝ちます」
最後の言葉は雲雀にしか聞こえていなかった。
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作者名:うがつ | 作成日時:2022年9月22日 23時