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ほどなくして乱闘に変わった棒倒しが終わり、雲雀は機嫌よくテントに戻っていた。
ツナがすぐに落ちたときはやっぱりこんなもんかと肩を落としたものだが、乱戦に切り替わってからは数の暴力ならと雲雀に食って掛かってきたものも少なくなかったため、意気揚々と雲雀はそれらを咬み殺した。
リボーンには会えなかったが、雲雀は大いに満足したのだ。
テントに戻るとAの姿が見えないことに雲雀が少々不機嫌になる。入るときに草壁や他の風紀委員から何も報告を受けていない。
咬み殺すか、なんて思った時ソファと服が擦れる音が聞こえた。
音のしたソファの方へ近づくと、そこではAが呑気に眠っていた。どうやら入り口からは死角になり見えなかったようだ。
「はぁ」
はしゃぎすぎたのか、空調が聞いているこの空間が気持ちよくて眠ったのか、細かいことは誰にもわからない。
このままにするのもどうかと思い、仕方なく雲雀は学ランに通していた腕章をシャツに移して学ランをAにかけた。その僅かな衝撃でAは起きてしまったようだった。
「んん……ひばりせんぱい？」
軽く体を起こしたが、口が上手く回っていない。寝ぼけているのだろう。
「まだ寝てたら？」
「……いいんですか？ ふふ、ありがとうございます」
言葉を返すが、やはりまだ寝惚けている。Aは雲雀がかけた学ランをそのまま布団代わりにして眠ってしまう。
「……はぁ」
目の前の人間に、いつから自分はこんなに甘くなったのか。
少なくとも初めに校舎前で出会ったときはこうなるとは思っていなかった。
Aの少し長い前髪が顔にかかり、Aは鬱陶しそうにしていた。雲雀がその前髪を手でさらりと避けてやると、Aはその手を掴んだ。
「っ」
ほんの僅か、雲雀から声が漏れた。油断していなわけじゃなかった。でも、避けられなかった。
「ん、ふふ」
何の夢を見ているのやら、笑い声を零したAに掴まれている手を振り払うことはしなかった。
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作者名：うがつ | 作成日時：2022年9月18日 16時
