if 白虎と初めの黒い龍 (ページ16)

今日:4 hit、昨日:19 hit、合計:894 hit

3・白虎、黒龍と絡む（R-15）ページ16

天井に昇っては換気扇に吸い込まれていく湯気を、眠りに落ちそうな眼で眺めていた。激しく李里を暴いた人と同一人物とは思えないほどにやわらかい、まるで繊細な飴細工にでも触れるような手つきで髪を梳き、体を撫でおろしていく恋人。椅子に座った彼に身を委ねて、甲斐甲斐しく世話を焼かれる。
「寝そうだな」
「…気持ちいいことは、とても疲れる」
程よい気怠さと、欲が満たされたことによる充足感。極めつけには、真一郎の体温と脈拍。行為の途中はあれほど熱かった体は、すっかりいつものぬるさになっている。
「そっか」
真一郎の手で掻き立てられた泡が李里の肌にそっと擦られて散っていく。行為の最中ではきっと過敏に反応して欲を高めていたであろう触れ合いも、今はただひたすらに安楽だ。
「真一郎さんは、気持ちよかった？」
「おう、最高だった」
泡が微温湯で洗い流されていく。花筏がゆらゆらと下流に向かっていく様に似ている、となんとなく思った。
「ふは、もうほとんど寝かけじゃねえか」
「…んふふ」
優しい温かい雨の降る音がする。それと、愛しいひとの低い声も。今、この瞬間に世界が止まってしまえばいいのにと思う気持ちが気泡のように立ち昇っていく。幸福のさなかで李里は眠たさに意識を溶かした。

3・終・帰途のこと。→←3・白虎、返り討ちに合う（R-15）