金曜日の魔法使い

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Aは昔から負けず嫌いで

人に弱い所をあまり見せない。



でも、アホやから、いっぱいいっぱいになるまで

一人で色々抱え込む。



だから、心配やなって思うときは

なるべくそばにいるようにしてる。




俺が"大丈夫やで"って言えば、Aはまた笑ってくれるから。




いつしか、Aは俺の知らない所でいっぱいいっぱいになったとしても


"ちょっとだけ聞いて"って、たまに俺には弱音を吐いてくれるようになった。






それが、嬉しかった。






俺だけが知ってる"ちょっとだけ"の話。

俺しか知らない"特別"な話。




俺はあいつの"特別"なんかな。


"特別"になりたいな。




そんな風に思ったのは、Aが俺の中で


幼馴染以上の特別な存在になっていたから。







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水曜日は特に部活が忙しくて。

いい加減、連絡してみようって思っていた木曜日


Aごめん、予定があって明日無理になっちゃった また来週ね!

って久しぶりのメッセージ。



金曜日を楽しみにしてた俺としてはかなりテンションの下がる内容。






"予定"って、合格して手続きとか？

忙しいんかな。



てか、ずっと連絡待ってたのにこんだけ？！



…なんか、薄情やなぁ。

まあ次会ったらずっと連絡せんかった罰でアイス1本追加したろ。



なんて考えながら


.りょーかい!


とだけ返信した。






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またAに会えない金曜日。

坂道を全速力で登って、息を切らして家に帰ったら





「廉！Aちゃんのお母さん、倒れて入院してるんやって、聞いてない！？
お母さん、明日お見舞い行ってくるわ」



なんて、母親が言うから。









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『………は？』









慌ててスマホを開いて、電話をかける


〜♪〜♪




「もしもし？」

『っ、今どこ？』

「え？」

『今どこって聞いてんねん！』



「……家、だけど。」

『…ほんまに？』



「……あ、聞いたの？、ママのこと。」

『聞いた。』





「………れん、あのね、

『迎え行く』







「…え？」



『今病院、なんやろ？どこ？』



「…っ、」



『早よ言え、アホ』



「…市立病院。」

『わかった。また連絡するから。待っとけ』








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"れん、あのね、ちょっとだけ聞いて、"








そう、Aが言いそうな気がして


早く行かな。って


部活帰りの制服のまま家を飛び出して

自転車を走らせた。








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