雨のち晴れ＜5＞ ページ33
.
父さんに会うため、一時帰国することになった。
タカはガチガチに緊張している。
「待たせたね」
「父さん」
「増田くん、だね。初めまして、祐也の父です。息子が面倒をかけて申し訳ない」
「こちらこそ……忙しい中、お時間をいただいてありがとうございます」
「行こうか。上のレストランを予約してあるんだ」
ホテルの最上階にあるレストランで
いろんな話をしながら食事をした。
「……増田くん」
「はい」
「祐也は勘当中でね」
「存じてます」
「手越という後ろ盾を無くした彼に、なんの魅力がある？」
「……」
「今は情熱が勝っているからいい。でも先は長い。
世間的には理解の得られないことも多いだろう。
勘当したとは言え、大切な息子に変わりない。
少しでも自信がないと思うなら、祐也を返してほしい」
タカは父さんの方をじっと見て
ゆっくりと口を開く。
「返せません。手越の後ろ盾は関係ない。
こいつは、僕の一生かけて大切にします。
だから、あなたの所へは返さない」
「……君は愚直な男だな」
「褒め言葉としていただきます」
食事を終えて、2人で父さんを見送る。
父さんが、にっこり笑って握手を求めると
タカも自然と手を握る。
「楽しい時間だった。また食事をしよう」
「ありがとうございました」
「……祐也を頼む」
「承知しました」
タカは、父さんの姿が見えなくなるまで
深々と頭を下げていた。
少し後ろにいた俺は、タカの手をそっと握った。
「あー、緊張した！」
「父さんがまた食事しようって言うのは
気に入った人間だけだよ」
「ふふっ、よかった。…俺たちも帰ろっか」
「ねぇ？」
「なに」
「さっき父さん何て言ってたの？」
「……内緒」
「なんだよ、それ！」
何を話していたかはわからないけれど
鼻歌まじりでご機嫌なタカを見る限り、
嫌な話ではなかったんだろう。
「タカ？」
「ん？」
「俺、とりあえず仕事探すね」
「しばらくゆっくりするんじゃなかったの？」
「タカのお荷物になりたくないもん」
「めちゃくちゃ甘やかしてやるのに」
「ばか」
「だからそれ、俺のセリフ」
繋いだ手が離れないように指を絡ませて歩く。
もし、この情熱が薄れていったとしても
喧嘩をする日があったとしても
この手を離したりしないから。
「ゆうや」
俺の名前を呼ぶ声は、底なしに優しい。
あなたがいるから、歩いていける。
きっと、これからだって。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りお(プロフ) - 莉織さん» 莉織様、温かいお言葉、本当にありがとうございます(^^)。子供と大人の割合が半々くらいの手越さん、いかがでしたでしょうか(^^)。最後は、増田さんの重めの愛で締めさせていただきました。これからも甘々な2人を描けるように頑張ります！ (2019年5月14日 21時) (
レス) id: de0e8fed57 (このIDを非表示/違反報告)
莉織(プロフ) - りおさん» 早速、可愛い手越くんがいっぱいで最高です！ ちっちゃくなるだけじゃなくて、テゴマスの甘々もあるのが新しくてとても楽しみです！ (2019年5月14日 19時) (レス) id: 6e79a16567 (このIDを非表示/違反報告)
りお(プロフ) - 莉織さん» 莉織様、コメントありがとうございます(^^)。子供になってしまうと言う設定は初めてなので手探りで物語を進めております。少しでも楽しんでいただければ幸いです！本当にありがとうございます(^^)。 (2019年5月14日 6時) (レス) id: de0e8fed57 (このIDを非表示/違反報告)
莉織(プロフ) - いつもお話読ませて頂いています。甘々なテゴマスがいっぱいで面白くて、最高です。今回は、手越くんが子供になるみたいなので今からワクワクです！更新頑張って下さい！応援しています！ (2019年5月13日 18時) (レス) id: 6e79a16567 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りお | 作成日時：2019年5月13日 6時
