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(2017年)
ステージに立つのが怖くなって、逃げるように日本に帰ってきて早1ヶ月が過ぎようとしていた。もう1ヶ月、されど1ヶ月。周りもその話をしないけど、わたし自身もSEVENTEENのことを目に入れようとはしていなかった。みんなからメッセージもたくさん来ていたし、電話だって。でもそれを出ようともしなかったのは、今みんなのことを目にしたら、きっとすぐにでも会いたくなってしまうから。会いたくないわけじゃないけれど、今は会えないと思っていた。
正直初めてだ。1ヶ月もSEVENTEENのことを考えなかったことなんて。それと同時に不安も襲ってくる。あの場に戻れるのだろうか、とか、戻りたいと思った時にわたしの場所はあるのだろうか、とか。考える方がしんどくて、敢えて考えないようにもしていた。
「久しぶりだなぁ。元気か？」
『元気です、電話に出れなくてごめんなさい』
久しぶりの着信の相手、副代表だった。画面の向こうから笑い声が聞こえる。
「いいんだよ。元気でいてくれるならそれだけで」
『フフッ、ありがとうございます』
「……あいつらにもたまには連絡、返してやれよ？心配してるからさ」
『…はい』
「うん。それで今日は、見て欲しいものがあって連絡したんだよ。メール、送ってるからそれに添付してある動画。絶対に見ろよ」
『分かりました』
「うん、それだけ。また電話しよう」
『はい。可愛い顔で良ければ、セルカでも送りますよ？』
「要らん、要らん」
『なんでですか！いつも可愛いって褒めてくれるの副代表ぐらいなのに！』
「アハハハ！今度は直接、顔見せてくれよ」
『…はい、分かりました』
副代表はいつも優しく、そしてわたしたちの味方で居てくれる。もう一度お礼を伝えて、電話を切った。
さっき言われたメールはもうすでに届いていて、そこに添付された動画。ファイル名は“SEVENTEEN_Dontwannacry_“となっていた。
ーーーDon't Wanna Cry.
わたしのSEVENTEEN人生の中で初めて、そして唯一みんなと完走することが出来なかったタイトル曲だ。
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作者名：柚紀
| 作成日時：2022年12月26日 11時
