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「あぁ……。 私、弟が居るんですけど、弟が生まれてすぐに母が病気で入退院を繰り返してて。 ……退院する度に母がパンを作ってくれたんです。 それが、凄く凄く美味しくて」
話しながらも母を思い出し、どこか込み上げてくるものがある。
「……それで、次第に悪化して退院出来なくなっちゃって。 弟が寂しくないように母のフリして私がパンを作ったんです。 そしたら弟が "美味しい!" って食べてくれて……その時の弟の笑顔が嬉しくて、それで」
「そっか、それで……」
人に話す様な事でもないのに、何故か口が止まらなかった。
「……あ、ごめんなさい、こんな話……」
「お母さんも弟くんも嬉しかっただろうね。 俺も食べてみたいなぁ……」
……その言葉が、何故だか凄く嬉しかった。
相変わらず真っ直ぐ向けられたその目はブレることなく私を捉える。
「……あっ、その、私ここで! ありがとうございました! 失礼します!」
恥ずかしさからか、その場から逃げたい衝動に駆られた。
「え、ちょっと……!」
いつだったかの日と同じく、後ろから "待って" と聞こえた気がする。
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「……何してんの?」
慌てて帰ったことが仇となり、思い切り閉めたドアの音で二階からスニョンが降りてきた。
「た……ただいま……?」
ドアにもたれ掛かり息切れする私を不審者でも見た様な目で見てくるスニョンに、パンの袋を渡す。
「これ、店長が……好きなの食べな……疲れた……」
「お、美味そ。 サンキュー」
リビングへ行くと、ソファーにドカッと座りパンを頬張るスニョン。
そんなスニョンを横目に頂いたココアを開ける。
「ん、甘……」
「姉ちゃんココア飲んでんの? 珍しくね? 普段あんま飲まないのに」
「……まぁ、たまにはね」
「ふーん? ……んで、今日は何があったの、話聞くよ? ん?」
「……店長といいスニョンといい、絶対楽しんでるよね」
「まぁまぁいいからいいから。 言ってみなって」
「いや、今日はいいや……」
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「あ、そうだ。 姉ちゃん、再来週の土曜飯行かない? 知り合いが店開いたんだけど、サービスするから来てくれって」
「土曜? いいよ、仕事も休みだし。 どこでオープンするの?」
「わりとすぐ近く。 いつでも行けるよ。 んじゃ土曜ね、忘れんなよ〜」
「大丈夫だよ、じゃ私仕事行くから」
「んー、行ってらっしゃい。 頑張ってなー」
「はーい」
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tyai - 本当にいつも素敵なお話をありがとうございました!ずっとだいすきです💓 (2023年4月2日 14時) (レス) id: 4eebb26101 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とにかく大好きで何回も読み直してます… すんちsideの話はもちろんですが、じすはんに冷やかされて嫉妬して拗ねる話がみたいです笑 (2023年3月30日 14時) (レス) id: 7eba4932cc (このIDを非表示/違反報告)
yuikuma965(プロフ) - すごくキュンキュンしました!私もこんなふうに追いかけられたい…笑短編集、嫉妬とかみてみたいです(´∀`) (2023年3月30日 2時) (レス) @page46 id: 1a04ea6328 (このIDを非表示/違反報告)
くす(プロフ) - お疲れ様でした(>_<)続編も楽しみすぎて、夜も寝られません、、、ご無理のない程度に更新楽しみにしてます!!!! (2023年3月30日 0時) (レス) @page46 id: 1558d9da93 (このIDを非表示/違反報告)
diva05(プロフ) - このお話すごい好きです!恋人になった後の2人の関係性や、そうなってからの夜のお話も見てみたいです。 (2023年3月29日 19時) (レス) @page46 id: d2c25335f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MIE | 作成日時:2023年3月13日 1時