【男性声優】さ い だ ー が ー る ! ! ６【愛され】

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ぼんやりとしている。

目を開けて、最初に視界に入ったのは四角タイルの天井。

無機質で、かつ何も無くて。
まるで今の自分みたい。


もうAには、何も残っていない。

この大好きな声優という職業の中で、命よりも大事な声を失った。

戻ってくるのはわかっているが、今のところ目処はたっていない。


王子を無くした時の人魚姫はこんな気持ちだったのだろうか。

アースラにエリックを奪われたアリエルはこんな気持ちだったのだろうか。


もしそうならば、死んでしまった方がマシ…とは思わなかったのだろうか。


Aは、どうしてもそう思ってしまう。

生きてる価値すら見出すのが辛いくらい、落胆してしまう。

・

そんな事をぼぉっ…と考えていると、ふとドアの奥から話し声が聞こえた。

ゆっくりと体を起こし、｢…何事……｣と沈んだ気持ちで耳を澄ます。


少し言い争っているようにも聞こえて…と思えば、突然ドアが開く。

シャーーッ…とカーテンが勢いよく開いて、ぱちっ…と目が合った。



浅｢…っA……！！｣

｢…さ……ま…っ……。｣

K｢Aっ…って……あれま…。｣

江｢……もうちょっと経ってから入りましょうか。｣

柿｢だな。｣

浅｢……馬鹿、なんでそうやってお前は無理するんだよ。｣

｢…んっな……り、じゃ……。｣

浅｢あっ、あぁそっか。ごめん…喋れないんだった…。｣



入ってきたのは、浅沼。

目が合った途端ぎゅうっ…と力強く抱きしめられて、ちょっと苦しい。


少し悲しそうな目をした浅沼は、Aの唇に親指で触れた。

｢…？｣と頭の中でクエッションマークを浮かべる。

すると、指を唇に添わせて、ちゅっ…と親指越しに口付けが落とされる。


ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ触れ合う唇の先がなんだか甘く感じた。









｢…っ？！………あっうっ、…っ〜！！｣


浅｢……A、俺お前が喋れなくても全然好きだかんね。死にたいとか思うんじゃねぇぞ。｣


｢っ…！｣




これだからAは、浅沼に弱い。

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