【男性声優】さ い だ ー が ー る ! ! ６【愛され】

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ﾊﾞｻﾊﾞｻｯ…と台本が落ちる音が、耳からすぅっ…とすり抜ける。

頭が空っぽになるって言うのは多分こういうことで。
自分が酷い顔をしていることだけは、明確に分かる。


それは、隣にいる共演者のKENNと江口にも言えた。

二人とも、整っている顔がいやに表情がなくて怖い。

多分、収録ブース側にいる柿原もこの事を聞いたら同じような顔をするだろう。


｢Aの声が出なくなった。｣


たったその一文が、やけに重たく長く感じた。


最初は何を言っているのかわからなかった。

Aの声が出なくなった？
馬鹿馬鹿しい。

前会った時は、

あんなに喋って、
あんなに笑ったじゃないか。


でもそれは、症状や詳しい様態を聞くに現実味を帯び始めて。

こっちの意識がなくなりそうだ。
キャパが持たない。


すると、収録ブースから柿原が帰ってくる。



柿｢あれ、青空のマネージャーさん？え、青空は？｣

マ｢申し訳ありません、今回このお仕事に青空が携えなくなりました。｣

柿｢え？ど、どういうことですか…Aなんかやらかしたんですか？！｣

K｢かっきー、ちゃんと…話、聞いて。｣

マ｢………声が、出なくなってしまったんです。｣

柿｢……は…？｣

マ｢正確には、心因性失声。ストレスからくる病気らしいです。
本人は、何がストレスの原因なのかわかっていない様子でした。｣

浅｢…いつからなんですか。｣

マ｢今朝方、突然青空から連絡が来て。起きたらもう声は出なかったみたいです。｣



何故。
何故、よりによってAなんだ。

自分のことじゃないのに、自分の事のように辛い。

飲み込めない。

信じられない。


声優という仕事は、声あってこそのもの。

Aがこの仕事を心の底から好きなのは、態度を見ていればわかる。

それが、

声が無くなった…？









浅｢…Aは……今どこにいますか…。｣


マ｢病院です…あまりのショックからか倒れてしまって。｣


江｢…っ……。｣




もうこれ以上、胸を苦しませないでくれ。

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