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善逸はにやにやとした笑みを浮かべながらAに語り掛ける。


「Aちゃんにそんな可愛い過去があったなんて……」

「聞かなかったことにして……」


恥ずかしそうに頬を染めるAを見て、炭治郎の心の深くに眠っている加虐心がうずうずと疼く。


「……Aは昔からずっと方向音痴だからな!」

「炭治郎……!」


もうやめてと言わんばかりの小さな声。
Aは赤くなった自分の顔をその両手でおさえる。しかし、黒髪の隙間から見える赤い耳は彼女の小さな手では隠しきれていない。

そんな彼女があまりにもいじらしく、そしてたまらなく愛おしかった。
好きな子ほどいじめたくなる、と言ったりするほどだ。恋する少年にとったら些細な意地悪してしまうのも仕方ないのかもしれない。







「こ、コホン。えー、それでは博物館に行く場合の日程を決めましょう」


Aは咳払いをしながらあからさまに話題を変えようとする。少しでも話を逸らそうという魂胆が丸見えだ。

炭治郎がAの瞳と目を合わせるれば、どうやら先程からかわれたことを根に持っているのかあっかんべーと言わんばかりに軽く舌を見せた。

Aのその仕草に炭治郎は少しだけ肩を揺らし笑った。

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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時

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