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「……兄弟だと、こいびとになれねえのか?」
Aは自分の手を伊之助の手に重ねながら優しく言った。
「うん、そうなの。ごめんね。最初からちゃんと兄弟は恋人になれないって、説明した方が良かったよね」
「……じゃあ、兄弟じゃなかったらこいびとになってたのか?」
伊之助はそう言って純粋な瞳でAの目を見つめる。善逸はそんな伊之助の疑問を心の中で恨んだ。
「(なんでそんなことを聞くんだ……)」
伊之助の疑問はまるで『全て覚えている』かのように、善逸が思わず焦ってしまうようなことを的確に聞いてきた。けれど、伊之助のその目から探るような気配は感じられない。
Aは伊之助の言葉に少し困ったように笑いながら答えた。
「それは、兄妹じゃない場合の私達によると思う」
Aのその言葉を最後に、誰も何もその話題について触れようとしなかった。
ただその空間に沈黙だけが流れる。
炭治郎はといえば、じーっと伊之助の手に重なっているAの手を見つめていた。しかし、ハッとして目を見開くとその沈黙を破るようにAに声をかけた。
「……A! そろそろ昼休み終わるから教室戻った方がいいんじゃないか?」
「あっ、ほんとだ……。って、そういえば次は移動教室だった! ごめんもう戻るね!」
Aはあたふたとお弁当箱を片付けながら炭治郎に一言だけ言い残した。
「炭治郎! 放課後一緒に帰ろうね!」
「ああ! 下駄箱で待ってる」
慌ただしそうに教室を出ていくAを炭治郎は優しい目で見送った。
そんな炭治郎のことを善逸はちらちらと見つめていたかと思えば、どこか真剣そうな表情で炭治郎に言葉をかける。
「なあ、炭治郎」
「どうした善逸?」
「後で少しだけ時間をくれないか?」
善逸の真剣なその顔に炭治郎は笑って言葉を返した。
「ああ。全然いいぞ!」
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時