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授業終了のチャイムが鳴り響くのと同時に炭治郎は左隣の席にちらりと視線を向けた。

他のクラスメイトは皆昼食のために各々席を移動したりしているが、善逸だけは気の抜けただらしのない顔をしながら頬杖をついてその場から動かずにいた。

どうやらチャイムが鳴ったことにも気づいていないようだ。

炭治郎はふぅ、と息を吐き覚悟を決めると勢いよく席を立ちあがった。ガタリと炭治郎の座っていた椅子が音を立てる。
その音に善逸は少し驚いたように体を揺らし、炭治郎の方を向いた。

そんな善逸に、炭治郎はいつになく真剣な表情で声をかける。


「善逸。少しだけいいか?」


善逸も炭治郎の真剣な雰囲気につられたのか、表情を引き締めて応えた。


「……ああ。俺も少し話がしたい」







二人は先日前世のことを打ち明けた時と同じ、学校の階段裏を訪れた。

しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは炭治郎だった。


「ごめんなわざわざ呼び出して。今日の善逸、何だか様子が可笑しかったから。それで俺思ったんだ。善逸が一日中上の空だったのはあの時の会話のせいじゃないのかって」


炭治郎のその言葉に善逸は少しだけ言いよどみながら答えた。


「うーん。いや、まあ……。やっぱり……少し驚いて。変な心配させてごめん。でも俺、どうしても炭治郎が――」


炭治郎は善逸の言葉を遮る。


「善逸の言いたいことはわかってる。俺とAを心配してくれてることも」


炭治郎はそう言って眉を下げる。

そんな炭治郎の顔を見て、善逸は前々から聞きたかったことを言葉にした。


「炭治郎……辛くないのか?」


善逸は心底心配そうな顔でたずねる。炭治郎はそんな善逸の顔を見て悲しそうに笑った。


「辛くない――って言ったら嘘になる。でも……善逸も、ずっと辛かっただろう」




善逸の胸が一瞬跳ね上がった。なぜだかその言葉を聞いて全てを見透かされている気分になる。
『この想い』がなければその言葉に対してここまで考えることもなかったのだろうか。

善逸は少し俯きがちに答えた。


「――……まあ辛いこともあったけど何とか頑張ってこれたから」


あたりざわりのない返答が出来ただろうか。そんなことを考えながら右のほうに視線を逸らす。



「――……なあ善逸。実は俺、この学園に入学して善逸に会った時からずっと思ってたんだ」


炭治郎が言葉を紡いでいく。




「――善逸にならAを任せられるって」




その顔は苦しそうに笑っていた。

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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時

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