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入学式が何とか終了し善逸は自分の新しい教室に足を踏み入れた。
席は一番前の窓際。良いとも悪いとも言えない。否、どちらかというと悪い寄りの席。
善逸は自分の席に座ると一度だけ深いため息をつく。
そんな彼は周囲から見てもわかるような鬱鬱とした雰囲気を纏っていて、少し話しかけにくいようにも思えた。
けれど、そんな善逸に近づいていく人物がいた。
「あの!」
急にかけられた声に善逸はバッと顔を上げた。
「あっ……!」
「善逸……。……我妻善逸、くん。だよな」
善逸の目の前にいたのは竈門炭治郎、彼だった。彼は人の好い笑みを浮かべながら善逸の隣の席に座った。
「あ、おう……。ええと君は、竈門炭治郎。くん」
お互い珍しい名前だったはずだが、名前を聞き合うこともなかった。
そんなことより名前の最後に慣れない敬称がついていることの方が気になる。なんだか胸が少しむず痒い。
「良かったら名前で呼んでほしい」
炭治郎はそう言って相変わらずの優しい微笑みを見せた。善逸はそんな炭治郎の言葉にフッと気の抜けたような笑顔で応える。
「じゃあそうするよ。俺のことも名前で呼んでいいよ」
そうだ。これだ。こうして大切な友人と再会して話すことをずっと、何年も望んでいたんだ。
「これから、よろしく」
そう笑った炭治郎の顔は少しだけ泣きそうな顔をしていた。その顔を見て善逸も少し泣きたくなった。
できれば今すぐに炭治郎と同じ苗字の“あの子”の存在を訊ねたかったが、担任が教室に入ってきてホームルームを始めてしまったので結局タイミングを見失ってしまった。
結局善逸がAと再会し、炭治郎との関係を知ったのはそれから数日後だった。
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時