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ようやく笑いが落ち着いてきた彼らは、痙攣寸前の横隔膜を抱えながらそれぞれ自分の昼食を机に広げていった。
まだまだ時間の残っている昼休みを満喫するように、くだらない話に花を咲かせながらそれぞれお弁当の中身を食べ進めていく。
たまに善逸が思い出し笑いなのか、ふふっと可笑しそうに笑っていること以外は特段いつもと変わらない昼食時の風景だった。
しかしそこで、誰よりも早く弁当箱の中身を平らげた伊之助が、ガサゴソとポケットから四枚の紙を取り出した。
「そういやババアからこれ貰った」
Aは間髪入れずに伊之助のその言葉を指摘する。
「おばあちゃん」
「オバアチャンからこれ貰った」
善逸は不思議そうに伊之助の持つそれを見つめる。
「何それ?」
炭治郎はその紙を隣から覗き込む。
「……これ博物館のチケットじゃないか?」
「あー。この前できたばっかりのやつか」
「オバアチャンが……」
小さな小さな声が聞こえた。三人は伊之助に視線を向けてその声に耳を傾ける。
「オバアチャンがトモダチと行ってこいって……」
伊之助はその頬を少しだけ赤くして俯いた。
ぽとり。誰かのミニトマトが弁当箱に落ちる音。
伊之助のその言葉に炭治郎、A、善逸の三人は目を丸めてお互いの顔を見合う。
次の瞬間、三人はそれぞれ騒がしく声を上げた。
「ねえ炭治郎! 今度のお店の定休日いつだったっけ⁉」
一人はポケットに入れていたスケジュール帳を慌てて取り出して。
「ええと! 確か再来週ぐらいに次の定休日があった! 博物館は結構距離もあるから行くならやっぱりバスだろうか⁉」
一人はスマホを使い博物館までのルートを確認して。
「伊之助はしょうがねえなー! 俺が一緒に行ってやるよ!」
一人はにやにやと嬉しそうに笑いながら落としかけたミニトマトを口に入れた。
伊之助はそんな三人の反応を見ながらわなわなと震える。
「うがあぁああああ!」
獣のように大声で叫びながら立ち上がった伊之助に、炭治郎たちを含めるクラス中の人間がびっくりして視線を向けた。
どうやら恥ずかしさが限界突破したようだ。
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時