終わりの熾天使〜真っ赤な崩壊、瞳を濡らす天使は高みの見物〜

第十二話 ページ46

ひどく楽しげな音だ。

人間は少ししか生きられないから、話すことがたくさんある。

ただ食事をしているだけなのに、彼らの纏う空気は、いつもきらめいている。

館の最上階にいるのに、その温かさが足元に伝わって来る。

少し羨ましい。私にはもうできないことだ。

何より私は、一人だから。

寂しいと。苦しいと。

僅かにも瞳が揺れないのは、それらを隠せているからか。

あるいは無くなってしまったからか。

A『…埃っぽいなぁ…』

T字の廊下。左側だけ、埃が多い気がした。

この館には、ついさっきまでフオラ･オントが管理していた。

なのにここには埃が溜まっている。ならそれは、フェリドのみが使っていたのだろう。

ほんの少しの違和感と、ちょっとした好奇心だ。

左折した先の扉に手をかけた。

瞬間に圧倒的な違和感が指先から伝う。

塵も積もれば山となる。と、使い方は違うが、その言葉のようだ。

埃程度の、塵程度の違和感はやがて山のような存在感を放つ。

なんて、カタンと何かが作動する音を聞きながら呑気に思っていたはずだった。

違和感と比例するように膨らんだ好奇心を感じていただけ。

危険なんて感じなかった。

なのに。

A『…あれ…？』

思わず疑問がこぼれ落ちた。

作動した何かもろとも、扉から周りの壁まで壊れてしまっていた。

小さな崩壊が起こっていた。

しかし無音だった。何の音もしなかった。

音さえ崩壊し、消えてしまった。

そんな空間、私の胸の奥がざわりと音を立てた。

力が暴走した？

そんな、まさか。だって抑え込めていたはずだ。

四位を装うのは、弱くなるのはやめたのだから。

いや、弱くなってしまったのか？装う程の強さが無くなってしまった？

感情のコントロールに失敗したのだろうか。

それは無いはずだ。私は揺らいでいなかった。揺らぐ原因もなかった。

至って普通。そのはずだ。

ならば、

A『………遊ばれてる？』

つまりそういうことだろうか。

何のつもりだ、お前は誰だ。どんどん疑問が生まれてくる。

それを抱きかけた私は、しかし捨てる。

地面に落として、踏み付ける。

自分が誰かもわからないくせに何を言う。私だって何のつもりもなく生きているでしょう？

答えのでない疑問はもう要らない。重くて、苦しくなるだけだ。

感情を整理して、切り替えて、扉の壊れてしまった部屋へ意識を向ける。

フェリドが立ち入りを禁止していたであろうこの部屋にあったのは

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