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琉巧.
琉「ほら、俺で目隠ししといたら?ちょっとはマシにならん?」
何か抱き締めてるみたいな体勢やけど、背に腹はかえられへんし。
Aちゃんを俺の方に向き合わせて、耳を塞ぐ手に俺の手を重ねた。1枚より2枚の壁の方が、多少は防音効果も増すやろう。ひどく冷え切った手は見た目よりも小さく感じられて、庇護欲のようなものが刺激された気がする。
いくら年上の先輩でも、女の子やから。悪い意味じゃなくて、当たり前に守ってあげたいと思ってしまう。Aちゃんは嫌かもしれんけど。
『……るうく、なんかおっきなった?』
琉「え?」
『めちゃくちゃほっとする、』
琉「……ほんまに?」
例えば、Aちゃんはこんなとき、大抵西村くんに甘える。それかふうさんかな。同期の絆に敵わへんのは最初から分かってたけど、それを抜いたとしても年下の俺には頼ってこおへんから。
やからこそ真意は分からずとも、単純に「ほっとする」なんて言葉に嬉しくなってしまった。
琉「もっと頼ってくれてもええってことやな、それは」
『……ふふ、うん。そうやな?』
琉「物理的にも精神的にも、伸び代あるで」
『なんやのそれ』
おかしそうに笑ったAちゃんは、俺の顔を覗き込んだ。
その表情からは不安や恐怖を感じることはなくて、俺まで励まされるようだった。だって、俺でもAちゃんを笑わせられるんやなあって確信が持てたから。
大切な人を守れるんやって、ちょっとでも思えた。
『……じゃあ、よく耐えましたってことで、ご褒美くれる?』
琉「ごほうび?」
『よく頑張りましたのハグとか……』
琉「急にやかましなったな」
『……あかんの?』
上目遣い、ほんまにやめてほしい。
……Aちゃんは、スキンシップが好きやと思う。簡単に言うとハグとかそういうやつ。でもほんまに気を許した相手にしかしないし、もっと言うとメンバーくらいやから、まあ見てて不安にもならへん。
でもそれは裏を返すと、メンバーに物凄く心を開いているというわけで。開いてるというか、預けてるみたいな?
「しゃーなしな」と呟いた自分の声は掠れていて、Aちゃんに届いたかどうかは分からへんかったけど。
その分力を込めて抱き締めてみると、彼女の腕が俺の背中に回された。
『……ふふ、るうく、あったかい』
こんなに可愛いなんて、ほんまに勘弁してほしい。
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作者名:流星 | 作者ホームページ:https://twitter.com/sst__05
作成日時:2023年3月14日 1時