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西村.
『ん〜……？たく、？』
拓「あ、起きた？」
『ごめん、寝てた……？』
拓「ちょっとだけな」
寝起き特有の、ほんの少し熱がこもった声。Aは普段から可愛らしい声してると思うけど、こういうときはいつもよりさらに可愛いなあって思う。
微妙に乱れた前髪を直すように、ふわふわと髪の上辺だけを撫でてやると、Aは目を細めて笑った。
『たくやのにおい、落ち着くねん……』
拓「へ？」
『気付いたらぎゅってしてるかも、』
拓「……なんやねん、匂いだけ？」
年上やけど、同期やし。たった1人の女の子やから、俺と風雅で守らなあかん！って思ってた。一応今も思ってる。
でも、Aは俺より何歩も先を歩いていて。それどころか全力で走っていっちゃうもんやから、俺も頑張らないと全然追いつかれへん。そのくせ、俺らのことを守ろうと1人で頑張ってる。
そんなに頼りないかなあ、俺たち。赤ちゃんちゃうねんで？
『ん、おなかすいた、』
拓「ほんっまに、本能のままに生きてるなあ？」
『うーん……それはほんまに』
拓「コンビニ行く？」
『どおしよっかな、食べすぎかも』
拓「……あんな、それはないで」
まだまだくっついてたかったけど、こんなとこ風雅以外に見られても困るしな。
ゆっくりと立ち上がれば、そんな俺を見てコンビニに行く決意を固めたのか、Aもソファから降りて俺の隣に立った。まだまだ眠そうな、そんな顔のまま。
拓「なに食べたい？」
『ん〜……チョコ』
拓「それもええけど、食べるんやったらちゃんとお腹に溜まるやつにしとき？」
『……なに、今日の拓哉お母さんみたい』
拓「Aは放ってたらすぐ痩せるからなあ」
言われんでも分かってる。俺がAのことをめちゃくちゃ大切に思ってることも、それを突き詰めれば誰にも渡したくないって結論に至ることも。風雅が言いたいのはそれよな、多分。
俺たちの距離感が普通じゃないのは分かってるけど、Aに気を許してもらえるんやったら、一生このままでもええねん。
多くは望まへんから、ずっとそばにいさせて？
拓「はい、はぐれたら困るから手繋ぐで〜」
『はあ？徒歩5分やろ』
拓「Aは5分でもどっか行くやろ」
『それは拓哉！』
やからまあ、疲れたときは俺に甘えてよ。
肩くらいは貸せるからさ。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年3月14日 1時
