5. 電池切れ ページ5
風雅.
風「……なあ、それ生きてる？」
拓「んー、寝てるけど」
風「急に静かになるからビビった」
何やかんや言うてもリハ続きの日々で、俺らは変わらず毎日一緒におる。
あったかくなってきて、春目前やけどまだ微妙に冷えとった。さっき生存確認した物体の正体はAで、寒い寒い言うてついには拓哉で暖を取り始めたかと思えば、また急に寝落ちするという。
後ろから抱きついたまんま、拓哉の肩に顔を埋めて爆睡中。
ちゃんと近付かな何も聞こえへん程度の寝息で、「くすぐったいねんな」と笑う拓哉は満更でもなさそうやった。
拓「日に日に軽くなってる気すんねんけど、大丈夫なんかな」
風「……ガリッガリやもんな」
拓「風雅が言えることちゃうけど」
風「ちゃうやん、女のガリガリは良くないやろ」
拓「……そやなあ」
スマホをテーブルに置いたかと思えば、優しく頭を撫でる。それでも起きひんのを確認して、拓哉は「いくら言っても聞かんし」なんて呆れたように呟いた。
それはまあ分かる。俺らが言うたところで聞き入れてくれへんのがAの悪いところ。
じゃあ誰の言うことやったら聞くんやろ？と思うけど、もしかしたらほんまにお母さんとか……家族に言われな納得せんかも。ライブ前は特にストイックやから。
風「軽くなってる気するって、抱っこでもしてるん」
拓「ちゃうやん、急に寝落ちするから横に寝かせなあかんくて」
風「ふーん？」
拓「……別に、俺じゃなくても抱っこするやんか」
いっつもニコニコしてるから、何となく分からんかったけど。
明らかに誰よりもベタベタしとるくせに、それを指摘されたら「そんなことない」って言ってみたり。顔真っ赤にして否定されても……とは思うけど、まあ拓哉には拓哉の考え方があるんやろう。
こいつらとはもう長い付き合いやから、あんまり多くを語らんでもいいというか。
風「俺はせえへんな、放っとく」
拓「可哀想やん！」
風「ちゃう、そのまま抱きつかせといたらええねん」
拓「……うん？」
アホとアホやから、多分周りの気持ちとかそういうのに鈍感で、誰かに言われなちゃんと自覚もせえへんし。手のかかる同期を持つと大変やなあ、なんかよく分からんけど自分に同情するわ。
まあ、別に俺もAが可愛くないとは言ってない、けど。
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作者名：流星
| 作者ホームページ：https://twitter.com/sst__05
作成日時：2023年3月14日 1時
