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貴方.
『……まさ、かどくん、』
正「ん?どしたん、落ち着いてきた?」
『うん……』
ぽんぽんと頭を撫でてくれていた正門くんは、「偉いなあ」と褒めてくれる。さっきからまるで赤ちゃんにするみたいに甘々だけど、今はそれが心地よかった。私、結局のところは甘やかされたかったんかなあ……不安やから、怖いから。そんなことで正門くんに迷惑をかけてしまったのは、かなり申し訳ないけれど。
ごめんね、は間違ってる気がした。彼が頭の中で何を思っているかは分からないけど、「おめでとう」と伝えてくれた気持ちを、無碍にはしたくないから。
『……ありがとう、わたし、頑張るから、』
待っててね、も違うけど……立派なアイドルになって、きっとこれからさらに人気になるであろう正門くんに、釣り合う人にならなきゃ。今ここで離れ離れになるのは、神様からの試練だと思うことにする。彼の隣にいても、何もおかしくないくらい……素敵な人になりたい。
ゆっくりと離れて、正門くんの顔が見えた。外は真っ暗で、表情はあまりよく見えなかったけれど、優しく笑っていることだけは分かる。
正「うん、俺も頑張るから」
『……うん』
正「ちょっと先で待っとってな、A」
『うん……ずっと待ってる、』
正「はは、……目真っ赤や、泣かせすぎたな」
泣いていたのは私の勝手だし、正門くんは何も悪くないのに。それでも全てを優しく包み込もうとしてくれる彼に、今度はちゃんと泣きそうになるのを我慢した。ふわふわと優しく目尻を撫でられて、表情が緩んで。
そんな私を見てか、よく分からないけれど……正門くんは一瞬だけ何とも言えない顔をして、また私を抱き締めた。
正「……ほんまに、待っててな」
「絶対追いつくから」と、まるで自分自身にも言い聞かせているように聞こえた。さっきよりも力強いハグに、何だか決意表明のようなものを感じる。恐る恐る背中に腕を回せば、同じように後頭部に手が添えられた。
こんな風にハグされて、まさかこんなにも心が落ち着くなんて夢にも思っていなかった。
大「……もぉ、ほら!明日も早いんやから、そろそろ帰るで?」
正「そうやなあ、……名残惜しいけど、また今度な」
『うん、……ありがとう』
私たちを見て、大ちゃんは「もう付き合っちゃえよ」と私だけに分かるように口パクで言ってみせた。
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