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匠「すみません、お待たせしました」
「あ、いえ」
北村さんのバイトが終わる時間は、閉店時間だったようでお店を貸切の状態で使っていた。
匠「えっと…何から話そうかな…」
「なんで私のことを知ってるんですか？」
何から話そうもなにも、私がいちばん不審に思ってるのはこのことだ。
匠「えっと、…小笠原海。…分かりますよね？」
「…はい」
匠「海の、元カノ…ですよね？」
「はい」
匠「海は、前までここで働いてたんです。俺はその時に仲良くなって。その時にあなたについて色々話してくれたんで、覚えてたんです」
「そうだったんですか…」
前まで、働いてた。
そりゃ毎日通ってても、海の姿を見ないわけだ。
匠「…覚えてたっていうか、覚えておかなきゃいけなかったっていうか…」
そう言うと、カバンの中から可愛らしい封筒を取り出した。
匠「これ、海が書いたやつです。Aちゃんにって」
「え？」
封筒には、ちゃんと海の字で " Aへ " って書いてあった。
「……これ…いつの…ですか？」
匠「海がこの店辞めるとき…高校生が終わる時かな。この店に、Aちゃんが来たら渡してくれって頼まれたんです。だから…待っててもらいました」
嬉しかった。
とてつもなく嬉しかった。
だって、こんな手紙を残していくってことは、高校卒業の時まで私のことを想ってくれてたってこと。
卒業式、声をかけられていれば何か違ったかもしれない。
またそんな余計なことを考えてしまった。
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作者名：ましゅまろ
| 作成日時：2020年3月19日 1時
