09 ページ9
·
·
なんだろう。この状況は。
·
瑠姫「あ、俺ね、白岩瑠姫。自己紹介まだだったね」
「…あ、私は鈴村Aです。」
瑠姫「Aちゃんか〜。可愛い名前だね」
·
·
数日ぶりに会った人と、どうして急に一緒に帰ることになってるんだろう。
どうして私は、この人と肩を並べて歩いているんだろう。
展開が急に進みすぎて全く整理出来ない。
·
はぁ、とドキドキする胸を抑えるように深呼吸をする。
体全部が心臓になったみたいで、たまにぶつかる肩が熱を持つ。
·
あ、もうすぐ家だな…と思った瞬間、彼が話を切り出した。
·
瑠姫「…女の子ってさ」
「…」
瑠姫「やっぱりああいうドレスに憧れたりするの?」
「…え?あ、うーん。女の子は皆、ウェディングドレスには憧れ持ってるんじゃない?…例えばシンデレラとか」
瑠姫「シンデレラ?」
·
そう聞き返されて我に返る。
私ったら何言ってんだ、と顔を赤くしていると
彼は優しく微笑んで「ん?」と顔を覗き込んでくる。
·
「…あ、いや…その、王子様が迎えに来てくれる…みたいな?!」
瑠姫「…王子様」
「……あ、違う違う!!今のなし!忘れて!口が滑ったっていうか、いや、ちがくて…」
瑠姫「ふっ(笑)」
·
隣を見るとはは!!と大笑いする彼。
「あ〜Aちゃん最高!」と笑い泣きしたようで綺麗な指で涙を掬い取る。
ひどい!と落胆していると彼の手が、ふわっと、私の頭に乗った。
·
え、と不意に声が出る。
·
瑠姫「楽しかった、ありがと」
「…」
瑠姫「俺こっちだから。またね、Aちゃん」
·
優しく笑ったその人は、髪を少しクシャっとすると私の家とは反対の方に曲がって行った。
·
心が、ふわふわとふわついた。
·
·
299人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カスミ | 作成日時:2022年6月8日 23時